Credit: Ventura County Fire Dept.
オーロビルダムの放水路欠損で貯水量が異常に増えて決壊の恐れが出ている中、今度は西海岸広域をハリケーン級の大型低気圧が襲い、河川やダムの決壊による洪水危機が続いている。南カリフォルに集中豪雨で住民が感電で負傷する被害や鉄砲水に車ごと飲み込まれるなどの被害が出ている。
この暴風雨は今季最大で過去6年間でも最大規模となる。一部の地域では100km/hを超える瞬間風速が記録され流ほどであった。豪雨は河川に流れ込んだため一部の道路は封鎖され多くの車が取り残された。
周辺住民188,000人が避難し混乱が続いているオーロビルダムの危機的状況が続いている。放水量を増やしたため貯水量は減少したため、直接の影響は少ないとされているが、今回増水に分水嶺から流れ落ちてくる大量の雪解け水が重なれば貯水量が増えて再びダム決壊の危険が高まる。
Credit: NOAA
今回の暴風雨の原因はアラスカ湾から南下した発達した低気圧にある。蒸発した太平洋の温暖な海水が上空の冷えた空気で冷却されたため局所的な豪雨となった。先の低気圧でシェラネバダ山脈の降雪量が一気に増えたが、今回は気温が高く雪とならなかった。しかし降り積もった雪が溶けて河川に流れ混むので河川の水量はさらに増えて、洪水の危険性が高まる。
オーロビルダム以外にも貯水量が規定を超えている場所があり今後しばらくは西海岸の洪水の危険が続くと考えられる。
これまで北米の異常気象の多くがエルニーニョ現象によって説明されてきた。豪雨はエルニーニョ現象の海水温上昇で蒸発量が増えたとして説明できるが、最近のカリフォルニアに慢性的に観測される異常乾燥は説明できない。西海岸の異常気象が太平洋の沖合に「ブロブ」(注1)と呼ばれる暖かい海水の巨大な塊によることが、近年明らかになっている。ブロブは西海岸の干ばつや北米東海岸の極寒など北米の異常気象を引き起こす。
Credit: NOAA
(注1)2013年に発見された太平洋の北米沿岸に発生する周囲より数度Cほど暖かい海水の塊を指す(上の図)。直径800km、深さ90mにもなるブロブは北米海岸の海流に影響を与え、北米の異常気象をもたらす。ブロブ発生のメカニズムはよくわかっていないが、大気流の停止で高気圧が停滞すると海水温度が高い塊となって移動が妨げられることが原因とされている。
間も無く終焉を迎えるエルニーニョ現象でジェット気流が変化すると熱帯から吹き込む暴風雨がメキシコ・中南米から北米を襲う。温暖な海水が大量の雨を降らせれば干ばつは無くなり、干ばつが長期化しているカリフォルニアには救いの神であるが、今回のように雪解けシーズンにかかる豪雨は逆に洪水の危険性をはらんでいる。エルニーニョ、ブロブ、アラスカの低気圧が複雑に絡んだ暴風雨でカリフォルニアのインフラは大打撃を受けている。
シェラ・ネバダ山脈に降る雪は春にカリフォルニア州の貯水池を潤す。しかし春を待たずに今回の豪雨は水位を危険なレベルに押し上げた。気候が温和で住みやすいとされてきた西海岸は一転して災害地域に指定される危険をはらんでいる。