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HIVウイルスに感染した患者も、抵レトロウイルス治療法によって通常の生活を送れるようになったが、ウイルスが退治されるわけではない。抜本的な治療法はないのが実状である。カリフォルニア州にある民間研究所TSRI(注1)の研究チームはHIV抵抗能力のある細胞を体内に増やしてHIVウイルスに感染した細胞を抵抗力のある細胞で置き換えることに成功した(Proc. Nat. Acad. of Sci.)。
(注1)TSRI: The Scripps Research Institute。職員2,500名、予算約300億円で代謝に関する研究を中心に、先端医療の研究を行っている。
免疫不全をもたらしエイズを発症させるHIVウイルスは免疫システムの機能障害を引き起こす。免疫細胞が機能不全に陥ると肺炎などの感染症に抵抗力がなくなる。血液や体液で運ばれるHIVウイルスは白血球のT-ヘルパー細胞と呼ばれる免疫細胞に取り込まれる。その後、ウイルスは細胞内で自己を複製し、次第に免疫システムが機能を失うため、感染症を発症する。
研究チームによれば、免疫細胞表面でウイルスに抵抗力のある抗体がウイルスの攻撃から守る。このためウイルスがリセプターに取り次いで増殖することができなくなる。HIV耐性化に関する研究はCity of Hope医療センター(注2)と共同で行われる。
(注2)City of Hope
は癌、糖尿病など生命に関わる病気の治療技術の研究開発と治療を目的としたNPO医療拠点。米国癌研究所から高い評価を得ている。医療研究に携わる研究者が医者と協力して精神的、肉体的疾患の先端医療技術を開発することが特徴。ロサンゼルス地区にキャンパスを設立する計画が進行中で、中心となるのはロサンゼルス北部のドアーテ地区に研究医療センター(City of Hope National Medical Center)がオープンしている。元々は20世紀初頭にロサンゼルスのユダヤ系サナトリウムで、60年代からユダヤ系資産家の資本が注入され、癌治療拠点となり規模が拡大した。