自閉症を発現する遺伝子の発見

11.03.2017

Photo: universityofcalifornia

 

近年増加の一途を辿る自閉症には特別な遺伝子が関与していると考えられてきたが、特定できていなかった。このほど機械学習のアルゴリズムを使った全ゲノム関連解析で、自閉症の発症に関係する遺伝子をこの手法で絞り込み、自閉症発現の鍵となる遺伝子が特定された(Nature Neuroscience Feb. 01 (2017)。

 

自閉症患者には平均73箇所のDNA変位を持つことが知られている。世界最大の自閉症啓発団体であるAutism Speaksの最新の研究によれば(治療による可能性を含む)18個のリスク遺伝子に自閉症発現に関係する特徴的な変位が見つかった。この結果、想定されていた自閉症が特徴的な遺伝子を持つことすなわち発症の遺伝子的起因が確定的になった。

 

今回の研究は2,066家庭の5,000人の自閉症患者について全ゲノム関連解析で調べられたもので、正常な人と患者のDNA配列の差と病気の相関を統計的に処理するものである。自閉症を引き起こす遺伝子はこのほかにも、患者によって異なる様々な病状に特有の遺伝子の変位があることがわかった。

 

18個の遺伝子はこれまで自閉症と直接関連付けされていなかったが、脳神経伝達機能に関係している。神経伝達機能を阻害する異なる変位は複数存在するが、注目すべきことは、遺伝子の活性化に寄与する(直接的な機能を持たない)ものも含まれていることである。このことが患者によって自閉症の症状が異なる理由であることがわかった。

 

またこのことで自閉症には社会生活に支障ない軽度のものから重い知的障害まで幅広い障害の程度があることも説明できる。多くの場合遺伝子要因であることから妊娠中の感染症の可能性もある。しかし最近の発症率の増加の原因についてはよくわかっていない。自閉症患者の脳は正常な場合より発育が良いことから、脳神経が多くなりすぎて脳の過負荷状態にあることがわかっている。

 

遺伝子変位が治療薬剤による化学的な原因であるものも含まれているとするならば、化学物質(薬物)の投与や環境汚染との関連性も否定できない。例えばGABA受容体のアロステリック調節因子を含む睡眠薬の服用で、発症に関連する遺伝子変位が起こる。またワクチンの有害薬物の疑惑も高まる中で、遺伝子変位をもたらす原因究明が期待される。