ストリートで古代史

 

 イスタンブールの有名なグランバザールは骨董品を探すなら格好の迷宮で、一度入れば数時間は飽きない、というより同じ場所にたどり着くことは不可能である。

 

 映画にたびたび登場するこの迷路の繁華街はうまく観光客を名所から誘導してトラップし、お金を巻き上げるのにちょうどよいロケーションにあって避けるのは難しい。最近では007シリーズの最新作"Skyfall"などで、スパイたちが人ごみに紛れて繰り広げるアクションが現実に起こっていても、ここの人ごみは自然に振る舞うだろう。

 

 というより何が起こっても不思議はないのである。イスタンブールやザグレブは東西の諜報機関の暗躍の舞台であるが、何故かはここに入り込めばすぐにわかる。

 

 歩いていると必ず愛想よくキャッチされて、骨董品や絨毯入り乱れて、うんちくとともに買い得である話をきかされる。よほど急いでいる場合を除いては会話は楽しく勉強になることが多い。

 

 もし貴方が少しでも骨董品や古代文明に興味があったら、グランバザールに限らずトルコは隅々にいたるまで宝の山のように思えるだろう。

 

 写真の店はイスタンブールから飛行機で数時間のところの古い街だが、数世紀をタイムスリップするのは簡単で、運がよければ掘り出しものに出迎えられる。

 

 売り値で買う人はいない、といわれるがいざ交渉となると、ものをいうのは言葉でなくて「眼力」である。一般に中東(トルコは西欧と呼べそうだが)の女性はブルカのせいでパワーがついたのだろう。眼力で値切るようだ。

 

 交渉の技術は人それぞれだが、ここでは魅力的な目をした女性なら老練な店の主人と対等以上の交渉が行えるだろう。ふとした瞬間にどこからともなくコーランが聞こえてくる。ここは異邦だと我に返る瞬間である。