フェニックスの夕日

  

 アリゾナ州の州都フェニックスはクリントイーストウッドの映画「ガントレット」の世界が広がる。夏の暑さは酷すぎるが、熱射病にかかりやすいのは乾燥していて、気がつかないうちに脱水状態に陥るからだ。

 

 そのため車内にクーラーボックスに氷をいっぱい詰めて炭酸飲料6本をいれて、飲み続ける必要があるくらいだ。ほんとに水分補給を忘れたら命取りとなる。また直射がきついのでクリントイーストウッド風の濃いサングラスが必需品となる。

 

 郊外にでると日中は停車したとたんに車体の温度が急上昇してさわると火傷しないためにはブランケットをボンネットにかぶせてしのぐ。

 

 市内はどこも建物に入ると、今度は冷えすぎのエアコンに体を慣らす必要がある。ここの人たちは日中も夜中もエアコンは入れっぱなしだ。聞けば1950年代には空調設備は大量生産が終わり普及率が高くなったため、人口が増えたという。

 

 銀行や食料品店などサービス業は競って室温を下げているかのようである。昼食にはメキシコ料理とビール(汗をかくと酔わない)をいただく。もちろん2杯目は氷がいっぱい入ったアイステイーがいい。

 

 通りには人通りはない。暑くて建物の中に非難しているからだ。筆者は一度、湿気の多い東部で呼吸器系を悪くした。そいうときはフェニックスに飛んでみたら、というアドバイスにフェニックスに飛んだ。

 

 空港に降り立った瞬間に西部劇の映画に迷い込んだ感覚になったのを覚えている。テンガロンハットはここでは正装だ。カウガールのような女性も多い。2日後にはすっかり元気になって街を散策しようと思ったが、危険なのでやめた。

 

 そのかわりちょっと郊外にでるとスコッツデールという街にインデイアン博物館がある。この街はインデイアン居住区に接している高級リゾートで富裕層のアパートが好対照である。

 

 夕方はフェニックスにいることを感謝するイベントがある。砂漠を背景にした夕焼けは息をのむ美しさである。この時間になるといわゆる"Happy Hour"で安くなるドリンクを求める人々でBARが賑わう。夕焼けにビールやマルガリータで一瞬に西部劇の世界にタイムスリップだ。

 

 大騒ぎしてもここの朝は早い。6時すぎにはレストランはコーヒーを求める旅行客が駆けつける。氷をアイスマシーンからクーラーボックスに移すことから一日がはじまる。見知らぬ旅行者でもすれ違いざまに挨拶してくれる。ここはいまでも西部のエッセンスが詰まった街なのだ。