昔はロンドンからニューヨーク路線は帰国するアメリカ人がほとんどなので、飛行機がニューヨークJFKに着地した瞬間に拍手と歓声が沸き起こった。自国に着いた時に拍手シュル国民が他にいるだろうか。少々懸念を持った私であったが、その後ニューヨークからボストンのローガン空港に飛んだフライトでも、ボストン市民とおぼしき客が拍手した。
なるほど、ニューヨークに着いた時にアメリカに渡った自分の祖先を思い、また彼らに言わせれば"Greatest Country"に戻った、ことを実感したのだ。ボストン市民はあきらかにニューヨークより合衆国の創始者達に近い存在だという誇りを持っているのだろう。
そのボストンで美術愛好家や絵画を愛する人たちの注目を集めるのがボストン美術館で、英語表記はMuseum of Fine Arts, Bostonなので、MOMAのような略式表記ではMFAとなる。
ここにはヨーロッパ絵画、中でも印象派のコレクションが充実している。時間が経つのを忘れてしまう空間は何度行っても飽きることがない。特に私のお気に入りのモネコレクションは素晴らしい。
しかしMFAのもうひとつの驚きは日本古美術品の豪華な展示だろう。岡倉天心が滞在したことからもうかがえるように、ここは日本美術をひいきにしているのだ。
見事な甲冑や刀剣の展示は日本にいてさえ滅多にみれない。時空を超えた本物のみが与える存在感は息をのむばかりだ。
確かに東部の日本文化びいき、特に富裕層と知識人達、は際立っている。あるとき地元の若者たちのパーテイに招待されたが、クロサワの映画の話題で盛り上がっていた。
またコネチカットでは全盛期の「山海塾」講演があり、日本での評価とは比べ物にならない評価であったことは驚きと同時にちょっとした誇りを覚えたものだった。
大英博物館のロゼッタストーンをエジプト政府が返還要求をしたらしい。甲冑や刀剣、陶磁器は3Dプリンターで完璧なレプリカをつくり、オリジナルはその国に保管したいと思う。
ただし展示環境がMFAを上回ることが条件である。ボストンを訪れたらまず訪れたいのはMFAである。
いまでもローガン空港に着地した時に拍手が沸き起こるのかは知る限りではない。
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