エリジウムの世界

ヨーロッパのシリア難民たちはいまごろどうしているのだろうか。シリアん夏から欧州に移動したときは着の身着のままだが、北部ドイツの寒さは半端ではない。北海からの風が身をさすようだ。中部では雪が混じって砂漠になれたシリア人にはこの寒さはこたえるだろう。

 

映画「エリジウム」では富裕層が地球を脱出してエリジウム(宇宙基地)に暮らしている。地球上は「D9」で描かれた難民状態。難民たちは過酷な環境にあえぐが富裕層はクリーンで健康な生活が約束されている。あらゆる病気が先進医療であっという間に治る世界。

 

映画は子供の病気を治すために地球を脱出して、エリジウムに乗り込むヒーローをマット・デイモンが演じている。

 

ふと難民たちと重なる部分があるなと思って考えてみたら、最近の米国のゾンビシリーズや「World War Z」など、悲惨な民衆が登場する映画が多いことに気ずく。

 

今年中にドイツが受け入れざるを得ない難民の数は100万人になるとみられている。日本は数名だが巨額の援助を決定した。100万ともなれば暴動でも起きようものなら、映画のようなシーンが普通の街に起こるだろう。

 

シリア難民たちの将来は残念だが明るい材料は何もない。移民と異なり自分たちの習慣や宗教を変えないから、相手国に溶け込めないからである。いまでなくとも必ず周辺の住民たちと争いが起きるだろう。

 

彼らには気の毒だが結局、新天地はどこにもない。結局、国に戻ることになるか受け入れてくれる国の慣習と宗教を自分たちも受け入れるかしかないだろう。

 

また他の国もシリアがどうして逃げ出さざるをえない国になったのか、考えてみるべきだ。ISのせいというなら誰がISを作り上げ、武器を供与しているのか。根本原因を直さなければダメだ。

 

ISの起源は2003年のサダム・フセインを倒すためにという名目で行われたイラク戦争で国内のインフラと統治機構が破壊されたこと。米軍の撤退時に置き去りにされた膨大な兵器が彼らに渡り2006年頃に頭角をあらわす。シリアに狙いを定めた彼らは、その後、シリアの内戦状態に乗じて勢力を一気に伸ばした。このときに米国からCIA経由で大量の武器がもたらされたが、現在の資金は乗っ取ったシリアとイラクの原油売買にある。原油取引ではブラックマーケットが存在し安値で原油を買い取る「先進国」の悪徳業者がいる。結局、先進国がISをつくりだし育ててしまったのだ。


 ISを抑え込むには資金を断つことが効果的だ、それならば原油輸出のインフラを破壊してしまうのが効果的ではないかという議論が高まりつつある。インフラ破壊には(原油掘削施設はまずいので)パイプラインを切断するか港を破壊すれば良い。しかしパイプラインの復旧は1カ月程度なので絶えず、攻撃しつずけなければならない。一方、港湾施設の復旧には6カ月を要するので、こちらが現実的となる。こうした議論がすでに行われているので、実行に移される日が近いだろう。資金がなくてテロができるのか試されるのはISである。