フランス全土に広がる反政府抗議の潮流

04.12.2018

Photo: news.sky.com

 

 今回のデモの背景は今回の燃料増税だけではない。きっかけとなった今回の増税前に段階的な増税で国民の負担が限度を越えるところまできたために、富裕層に配慮するマクロン大統領への不信感がつのり、政府の転覆を目指した革命前夜のような状況をつくりあげた。現状を整理すると背景がみえてくる。

 

現在の状況

・ 警察と消防隊がデモ隊に理解を示し鎮圧の手を緩めた(Katie Hopkins, Twitter

 

・ 1968年の暴動と反政府ストに続く、過去50年間で最悪の反政府抗議行動の規模となった

 

・ 抗議行動は3週目に入りフランス全土に拡大、136,000人が参加、一部はブリュッセルおよびハーグに飛び火、逮捕者は全国で682名、パリではは412名、負傷者133名をだした

 

・ 抗議行動の参加者はマクロン政権に見切りをつけ、退陣を要求している

 

・ 右翼ポピュリスト政党でMarie Le Pen党首率いるNational Rallyと極左政党Unsolmissive Frame(Jean Lu Melenche党首)が結託して議会解散と選挙を要求

 

・ 12月3日(月曜)100台以上の救急車ドライバーがパリの抗議行動に参加、救急隊がパリのコンコルド広場を封鎖、救急隊員たちはマクロン大統領の2017年の社会保障予算改革(救急車を呼ぶ際にどの会社の救急車運用会社を選択できるようにした救急システム改革と28年間据え置きの給与)に抗議したもの

 

・ フランス全土で高校生が反政府を理由に100校を閉鎖に追い込む

 

 これらの状況から、一連の抗議行動は都市部の富裕層対農村の99%を占める貧富層との格差に不満を持つ国民が改革の名の下にさらに悪化させるとして、現政権にノーをつきつけた結果といえる。

 

第二のフランス革命

 1789年5月5日のフランス革命は世界史上最初の「市民革命」であり、社会体制を変革して近代社会を市民が率先して樹立した革命であった。戦う市民のDNAは時代が変わってもフランスに根付いているようにさえ思える今回の抗議行動で、支持率25%以下のマクロン政権にとって、致命的な出来事となりつつある。

 

 フランス革命では有名な1789年7月14日のバスチーユ襲撃を契機としてフランス全土に騒乱が伝播し、市民による国民議会が発足して絶対王政と封建制度が崩壊した。これに対して革命の領地への波及を恐れる欧州の領主たちは革命政府とフランス革命戦争を起こした。

 

 絶対王政と封建制度をグローバリゼーションとそれをあやつり政府を動かすグローバリストに置き換えてみると、今回の反政府抗議は反グローバリズム運動が具現化したともとれる。市民の賛同で確固たる潮流が世界各国に普及するかもしれない。

 

 

Updated 06.12.2018 15:48

 一般のフランス庶民が置かれている苦しい生活状況に理解を示さないマクロン大統領は、「パリジェンヌの傲慢」、と地方政府からも批判が高まっている。8-9日にパリ中心でより過激な抗議を呼びかける「黄色いベスト」運動を受け、マクロン大統領は2019年1月から実施する予定であった燃料増税を5日に6カ月延期することを発表した。しかし廃止を求める「黄色いベスト」の納得を得られなかったことから、抗議デモは今後も継続することを明らかにした。

 

 

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