FRB利上げ中止の背景にゾンビ企業

02.02.2019

Photo: shabbir.in

 

 米連邦準備制度李議会(FRB)は30日、これまで続けてきた段階的な主要政策金利の引き上げを停止、年2.25~2.50%に据え置くことを決めた。貿易摩擦、政府機関閉鎖の影響や中国経済の減速による米国経済並びに世界経済の不透明感が増している情勢を主な理由とした。だが、米株式・経済に与える金利の上昇による最大なリスクが「ゾンビ企業」の増加とそれらの企業の倒産である。

 

増加を続けるゾンビ企業

 ゾンビ企業とは、創立10年以上の企業でインタレスト・カバレッジ・レシオ(営業利益+金融収益(受取利息配当金))÷支払利息が3年連続で1未満の企業のことである。インタレスト・カバレッジ・レシオは会社の活動で生み出す利益がどの程度支払利息を上回っているか、企業の安全性、財務上の健全性を示す指標である。1未満の会社は金利負担能力がないことを意味し、すでに経営破綻しているが淘汰されず、低金利政策でゾンビ状態を保ちながら存続している。

 

 国際決済銀行は2018年9月に「増加するゾンビ企業-その原因と結果」と題するレポートを発表している。先進14カ国(米国、英国、オーストラリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、日本、オランダ、スペイン、スウェーデン、スイス)の上場企業約32,000社を1987~2016年の期間を対象に調査した。レポートによると、1987年に上場企業に占めるゾンビ企業の割合が2%であったのが2016年には12%まで増加している。

 

 米国のS&P1500でみると、2000年に3%であったゾンビ企業の割合は2017年には15%以上にまで増えている。実に6社に1社がゾンビ企業である。2018年にはゾンビ企業の割合が25%以上にまで増加する見通しもでている。

 

ゾンビ企業をつくりだした低金利

 2008年のリーマン・ショックによる金融危機後の金融緩和政策の長期化によって、ゾンビ企業は増加、又それまでのゾンビ企業の生存率も上げた。低金利は、「倒産のない資本主義」の状況をつくったのである。経済学者ヨーゼフ・シュンペーターによると、金利の役割は資本の不適切な利用を制限することである。資本主義の原動力である創造的破壊は投資判断となる金利の設定で起きる。金利をゼロに切り下げると、資本調達コストは低いため倒産企業は少なくなる。このような企業の市場からの撤退がないため、生産性伸び率は低下、本来創出されるはずの新たなビジネスに資本が回らない状況を生みだすのである。

 

 FRBの第1次金融緩和(QE)の発動で金融機関の破綻を防ぐことはできたが、QE2以降は企業の設備投資より金融資産への投資や低い借入コストによってゾンビ企業の増加を招いた。

 

ゾンビ企業を葬り去るには

 金利の引き上げで、資本調達コストは上がり、ゾンビ企業の存続が難しくなる。米上場企業の4社に1社がゾンビ企業になれば、経済危機を回避するためにFRBは金利引き上げより再び金利引き下げの政策転換に転じる可能性は高い。