漁業水域をめぐるフランスと英国の争い

26.11.2018

Photo: thelocal.fr

 

 ブリュッセルで開かれたEU-英国の貿易交渉で、フランスのマクロン大統領は、英国がEU離脱後にEUとの交渉がまとまらない場合、英国の漁業水域がアイルランドの国境内(EEZ)に留まる可能性を示唆た。背景には英国とフランスのノルマンデイ海域の「帆立貝戦争」などの漁業権争いとアイルランド問題(注1)がある。

 

(注1)アイルランド島内のイギリス領北アイルランドとアイルランド共和国の国境の問題。英国がEUを離脱した後、英国とEUとの国境をアイルランド国境に設定すれば英国との自由な行き来が国境を介したものとなる。従来の慣習となっている自由な行き来を、利便性の観点で尊重し北アイルランドとアイルランド共和国との間は新しい国境制度を設けないことに合意しているが、厳密なEU国境設置は交渉のなかで難航している課題のひとつである。

 

強気にでるマクロン大統領

 マクロン氏は、貿易協定の維持は、最終的な英国とEUの貿易協定に関する次回の会談までは最大現に活用すべきだとしている。一方、英国のテレサ・メイ首相は、英国はEU離脱以後、EUとの関税協定の離脱を主張しているが、今回のブリュッセル交渉での合意内容の下では、これはアイルランド国境をEUの閉ざすことが避けられる選択肢がある場合に限られる。フランスが漁業権に関する紛争のため、貿易協定に同意しない場合、報復としてアイルランド国境の強化策の動きは避けられない。

 

 マクロン氏は、ブリュッセル交渉での記者会見で、漁業における公正な競争に27カ国が明確な立場を共有しており、それは将来の交渉のためのガイドラインとなるとしている。またメイ首相とブレクジット肯定派が関税同盟を長期間維持せず、この問題を解決する適切な将来関係を希望していると付け加えた。'

 

 EU共同声明は「漁業協定は優先事項であり、相互アクセスと既存の漁獲量の原則に基づくべきである」とした。また「将来の漁業協定は2020年末まで続くべきブレクジット後の移行期の終了前に締結しなければならないが、最大2年間延長することができる」とした。

 

英国のアキレス腱となるアイルランド問題

 少なくともEEZが生命線である漁師たちの利権は国が守る責務があり、国家間の交渉で不利益を被ると感じてた漁業関係者は英国とフランスの争いに不安を感じている。漁業問題は英国とEUの貿易交渉の一部にすぎない。今後膨大な貿易交渉の課題を交渉でひとつひとつ解決するには気の遠くなる程長い時間を要することは明らかだが、それでも英国にとってEU離脱がメリットとなるようだ。