著作権保護法を巡って分裂するEU諸国

22.01.2019

Photo: utterbuzz.com

 

 欧州議会は2018年7月5日、世紀の悪法として批判が多かったEUの著作権保護法案を否決した。米国IT企業GAFAに対抗するとして、EUが目指していた著作権法の見直しは、EU諸国間の結束を高めることにはならず、逆にEU諸国間の溝を深め、著作権保護法改定が遅れる可能性が高くなった。このため欧州議会、欧州理事会および欧州委員会は予定していた法案の草案に合意する会合をキャンセルした。

 

EUの著作権保護法案とは

この法案の目的は、ニュース配信者の収益拡大と、Googleが所有するYoutubeやFacebookなどのテクノロジー・プラットフォーム上の著作権のないコンテンツに対する取り締まりであった。しかしインターネット・ミームはSNSで情報共有・拡散の核心となるメカニズムで、禁止すればSNSは存在意味を失い消滅に繋がる。

 

メディア企業の収益性を損なう無料のオンラインニュースの台頭を背景に、AFPを含む主要な出版社は、第11条として知られるニュースメディア改革を推進している。しかしそれをインターネットで著作権のないコンテンツにリンクをはる行為に課金する「リンク税」と呼び強く反対するネットユーザーも多い。

 

 欧州連合の執行機関である欧州委員会は、デジタル時代の著作権を近代化することを目的とした改革を2016年9月に提案した。それはインターネットの自由を求める米国IT巨大企業GAFAにオンラインコンテンツの支払いを求めているメディアとクリエイターの間の争いを引き起こした。

 

溝を深めるドイツとフランス

 YouTubeや他のプラットフォームに対して、コンテンツ作成者への報酬を増やし、違法コピーされたコンテンツを削除するように強制する条項を巡って、ドイツ、オランダ、イタリアを含むEU加盟国の一致した賛同が得られなかった。フランスとドイツは立場を異とし、ドイツは中小企業や新興企業がコンテンツを事前にフィルタリングする必要性から免除されることを望んだ。著作権改革に満足していない加盟国はドイツの側に立ったため、EU諸国の分裂を招いた。

 

 分裂にいたった別の問題は、メディア出版社に有利な著作権を創設する条項で、これにより、新聞、雑誌、AFPなどの通信社が、GoogleニュースなどのウエブニュースやFacebookなどのソーシャルネットワークによってそのコンテンツがオンラインで再利用されたときの支払いの義務化である。

 

EU結束力の分裂が鮮明に

 著作権改革に関するEU内の分裂で、著作権保護法改定でGAFAとメデイアおよびクリエーターとの争いの長期化は避けられない状況となった。英国のEU脱離に加えて、著作権改正を巡る加盟国間の分裂は結束力を弱めることになる。

 

Updated: 23.01.2019 16:31JST

フランスの情報保護当局は21日、Googleが個人情報を収集する際に、利用者に明確な情報を提供せず、EUの規則に違反したとして、同社に制裁金5千万ユーロ(約62億円)の支払いを命じた(共同)。

 

 

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