選択的移住による都市成長で増大する地域格差

31.01.2019

Photo: cambridge.org

 

 農村を離れ都会に移る人は、平均して、教育水準が高く、認知能力が高い。スウェーデンのリンシェーピング大学の研究チームはその「選択的移住」が、都市部と農村部の経済格差と不均一な地域経済を生み出すことを明らかにした。選択的移住はまた周辺地域の犠牲のもとで、都市を成長させて経済的繁栄の都市と農村の格差を拡大している(Keuschnigg et al., Science Advances 5:eaav0042, 2019)。

 

 調査によると、農村部から都市へ離れる選択的移住が、大都市の成長に大きく寄与している。都市生活を分析すると、都市の富、革新、犯罪、および伝染病のレベルが、人口規模に対応した予測可能なパターン(都市部のスケーリング則)に従っていることがわかる。

 

+15パーセント現象とは

 また人口規模が都市の機能における最も重要な指標で、社会的および経済的指標が単に都市規模に比例して増加するのではなく、非線形力学の影響を受けることも明らかになった。都市の規模が倍増すると、総収入、特許数、住居移転数、離婚数がおよそ15パーセント増加する。これは、都市が成長するにつれて都市部の生産性と生活のペースが向上することを示しており、この15パーセントは、「超線形スケーリング」または+15パーセント現象と呼ばれる。

 

 この規則性を説明する数学モデルは、都市の生産量の増加が密集した都市環境における社会的相互作用の増大の結果であることを示唆する。大都市では、アイデアを交換したり、イノベーション、新しい形の社会生活、および追加の富をもたらすために協力し合う人々が増える。その結果、+15パーセント現象が都市部の自己強化プロセスで、現代社会全般にとって社会的に有益であると考えられてきた。

 

選択的移住が都市成長の鍵

 研究チームは、スウェーデンの統計データを分析して、+15%現象が都市における社会的相互接続性の増大に起因するかどうかを検証した。異なる規模の大都市圏間の人口構成の相違点から非線形性の原因となっているメカニズムを解析した結果、社会的相互作用では都市化による集積効果の半分しか説明できないことがわかり、首都圏間の人口特性の違い(選択的移住)が決定的要因であることが明らかになった。つまり都市がそれ自身で成長するのではなく、移住する人の能力差が都市の成長に寄与しているということになる。

 

 例えば、より狭い地域からスウェーデンのより大きな都市に移動する人々は平均して1.8年以上の教育を受けており、その認知能力(軍の徴兵中の標準テストで男性を測定)は滞在した人々より0.4標準偏差が高くなっていることがわかった。能力の高い人の選択的移住が、移動元と移動先の両方の地域の人口に累積的な影響を与える、言い換えれば互いの格差が拡大するということになる。

 

 農村から都市部に農民を移動させるだけでは選択的移住にならない。都市部に移住するのは成功を夢見るモチベーションの高い若年層だが、農民の土地を奪い鬼城で埋め尽くされる都市部に農民を送り込むどこかの国の政策に未来はないということなのだろう。