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国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の調査報告書は再生可能エネルギー源の急速な成長と化石燃料の消滅は、世界の政治に大きな変化を引き起こし、世界的な権力配分、国家間の関係、紛争のリスク、および地政学的不安定の社会的、経済的、環境的要因となっていることを明らかにした。
同報告書によれば、現在世界のエネルギー生産の5分の1を占める太陽光、風力、その他の再生可能エネルギーが急速に伸びている。この変化は化石エネルギーに依存してきた現在の地政学を根底から揺るがす変動となる。中国がアメリカをしのぐ強大国になり、石油依存の湾岸諸国の収入を減らし、貧しいアフリカ諸国がエネルギー自立を達成することになる。
「新世界」と題されたこの報告書は、アブダビで開催されるIRENAの第9回総会で発表される。化石燃料から再生可能エネルギーへの移行は、新技術とコストの低下によって促進され、再生可能エネルギーは従来のエネルギー源と同じくらい競争力を高めている(下図)。
Credit: IRENA
メインストリームへの道
太陽光発電の電力コストは2009年以来75%減少したが、風力タービンの価格は同じ期間に半減した。2020年までに、すべての市販されている再生可能エネルギー技術は、化石燃料の競合他社と同等かそれよりも安価になると予測している。
2017年には、再生可能エネルギーから記録された168GWの電力が発生し、前年の2倍になった。IRENA委員会は、各国が化石燃料の輸出に大きく依存していることは「深刻な経済的影響」を回避するために適応する必要があると警告した。再生可能エネルギーはエネルギー供給の分権化を可能にする。
地政学とエネルギー新世界
再生可能エネルギーは地球上の国々の分配率が化石燃料に比べて遥かに均一である。そのため再生可能エネルギーは、民主化の強力な手段になると言われている。特定の国や地域が独占してきた化石燃料の時代は、産出国が独占によって強大国となったが、再生可能エネルギーは公平にどの国でも、誰でも利用出来るのでエネルギー独占が成立しない。
エネルギー利権を失う勢力は再生可能エネルギーの発展を阻止しようとするだろうが、結果的に安全で環境保全に優れることが認識され、スケールアップで採算性も化石燃料を抜き去ろうとしている。エネルギー革命で地政学的な変化が避けられない。
再生可能エネルギーの進み方が遅いのは、メインストリームの交替で利権を失う人たち、「反対勢力」、のためである。しかしクリーンで採算性の良い筈の原子力も、燃料採掘と精製、そして何より使用済み核燃料の廃棄と高騰する建設コストを含めれば、電力会社にとっても市民にとってもメリットの少ないエネルギー源なのだ。小型原子炉も規模が小さくなるだけで原子力のデメリットが払拭されたわけではない。スマート送電網に小型原子炉を組み込んでもらいたいと思う人はいないだろう。再生可能エネルギーと水素などの貯蔵エネルギーを組み合わせる方向に、IRENA報告書のタイトル「新世界」がある。この新世界はエネルギーを誰でも安くまた安全に利用出来る理想郷である。
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