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エアランゲン大学(FAU)の材料科学研究チームは、有機(非フラーレン)ベースの単接合太陽電池の世界最高効率を達成した。分子構造の最適化で、1平方センチメートルの表面積で12.25%のエネルギー変換効率を達成した(Fan et al., Nature Energy online Oct. 22, 2018)。
有機太陽光発電システムは、ここ数年で急速に発展してきたが、有機太陽電池セルは2層の半導体からなり、1層は電子を供給するドナーとして作用し、2層目はアクセプターと電子伝導体として働く。シリコンとは対照的に、この系のポリマー層は、支持フィルム上に直接溶液から堆積させることができるため、製造コストが低いフレキシブルモジュールが特徴で、シリコン太陽電池よりも利便性が高い。
これまでカーボンベースのナノ粒子であるフラーレンは理想的なアクセプタと考えられていたが、フラーレンベースの複合材料ではエネルギー効率が制限される。そこで研究チームはフラーレンよりも多くの光を吸収する新しい有機分子を開発した。置換基を微妙に変化させた材料(下図)を系統的に合成して、特性を最適化した。
Credit: Nature Energy
性能と耐久性で有機ハイブリッド印刷された光電池が現在は商業的に有望とみられている。しかし、スケールアップして実用的なプロトタイプを開発するには、技術を数平方ミリメートルの実験室寸法から1平方センチメートルの標準化された寸法に移す必要がある。
しかしほとんどの場合、スケールアップでは材料の品質が低下し大きな損失が頻繁に発生する。研究チームは、有機半導体の光吸収、エネルギー準位、および微細構造を調整して最適化を行った結果、ドナーとアクセプタの互換性、短絡電流密度と開放電圧の良好なバランスを達成した(下図)。
Credit: Nature Energy
鍵となったのは、単一分子グループをポリマー構造に挿入したことで、これにより、12.25%の電力変換効率が得られた。これは、アクセプタが非フラーレンで、表面積が1平方センチメートルの溶液ベースの有機単接合太陽電池の新記録となる。研究チームはまた、温度や太陽光などのシミュレートされた条件下で生産に関連する安定性を実証することができた。次のステップは、モジュールサイズにスケールアップすることだが、これでフレキシブル太陽電池実用化へ弾みがつくと期待されている。
エネルギー効率がシリコンの1/2程度だが、低コストのフレキシブル太陽電池が普及したときを考えてみてほしい。日傘をさせばスマホを充電しながら歩き回れるし、キャンプやイベントでは早めにテントをはれば電気機器が使える。災害時に役に立つことはもちろん、東京駅のグランルーフのような構造では大電力が使えるので、バスを待つ客が快適に過ごせる。ひとつひとつは小さな再生可能エネルギー利用だが、確実に快適な未来社会が実現するだろう。