Credit: NASA
2018年の台風19号は今まで記録された最も強い熱帯低気圧のひとつであるが、1980年代から太平洋の大型台風の割合が増加している。南京大学の研究チームの研究によると、地球上層の温度変化は太平洋の強い台風の増加を招き、今後数10年間に強い台風が発生する可能性が高いことを示唆している(Wu et al., Earth’s Future online Oct. 10, 2018)。
海洋混合層として知られる海の表層(平均約200m)は、常に大気とガスを交換し、風、熱伝達、蒸発および塩分の変化によって混合される。研究チームの研究で、熱帯サイクロンの軌道に沿って海洋混合層が2002年から2015年にかけて1.7-2.0メートル深くなっていることがわかった。この深化が1980年から2015年にかけての台風発生数の増加を引き起こす可能性があり、今後数10年にわたって、台風発生の増加が続くと予測された。
太平洋の台風は、以前に投影されたものよりも激化する可能性がある。研究チームは過去数10年間に発生した台風の規模の変化を研究してきた。新しい研究では、海面温度、外気と水の温度、海洋混合層の深さ、垂直風のせん断効果などの台風強度を決める様々な要因の寄与と、熱帯低気圧の軌跡を調べ、計算機シミュレーションを使用して、1980年から2015年までの各年の西北北太平洋盆地における観測された熱帯低気圧の強度と各要因を比較した。
熱帯低気圧の強度に対する各環境要因の寄与度を定量化した結果、彼らは大型台風の割合の増加が主に海洋や大気の状態の変化によって引き起こされる海洋混合層の深化によるものと考えられている。
海洋混合層の深化は、気候変動の結果として2000年以来西部北太平洋で起きた大気および海洋循環への効果のひとつである。そのため北太平洋の将来の台風は、以前よりもさらに強く、さらに大きくなる可能性があると結論づけている。これまでの研究は混合層の深さを考慮していないので、台風の規模の増加が過小評価されてきた。下図はシミュレーションを含めた熱帯低気圧の頻度(Emanuel, PNAS 110, 12219, 2013)。