大地震につながるサイレントスリップの脅威

23.01.2019

Photo: theextinctionprotocol.wordpress.com

 

大きな地震は「浅い断層クリープ」に続く「地震群」が引き起こすと考えられている。オレゴン州立大学の研究チームはオレゴン沖の運動が主に水平であるプレート境界トランスフォーム断層を調査した結果、サイレントスリップまたはスロースリップとして知られている、スリップは顕著な地震活動なしで発生する断層に沿った変位が、大地震につながる現象であることを見出した(Kuna et al., Nature Geoscience online Jan. 21, 2019 )。

 

海底下では、変成断層が海底の尾根をつなぐことで拡散し、火山活動によって新たな海洋地殻が形成され、尾根から徐々に離れていく。研究者は、トランスフォーム断層の上とその周辺の海底に55年間地震計を配置した長期観測結果を分析した。2012年9月から2013年10月までの地震計の配備により、調査対象地域であるブランコ断層の130キロメートルにわたるブランコリッジで1,600を超える地震を検出した。

 

尾根に沿った2つの異なる縁がおよそ14年ごとにマグニチュード6の範囲の地震を発生させた。最南端のブランコ断層は、オレゴン州の最西端に位置するブランコ岬から約100マイル地点から北西部のNewportから約300マイルの地点まで走っている。ブランコ断層と海岸線の間にあるカスカディア沈み込み帯(注1)は海洋プレートが大陸プレートの下に沈みこんでいる。

 

(注1)沈み込み帯では、プレート同士の境界が強い圧力によって密着して固定されたアスペリティ(固着域)ができる。アスペリテイは、数十年から数100年の間、エネルギーを溜め込んで動かないが、地震の時に一気にずれ動くことで、大規模地震を発生させる。

 

このカスカディア沈み込み帯の断層は1700年にマグニチュード9の地震が発生した場所として知られる。研究チームは①ブランコ断層のサイレントスリップがカスカディア沈み込み帯スリップを引き起こす可能性があることを見出した。また、②地殻と上部マントルの間の境界の下の断層深部でサイレントスリップが観測されていることからみて、断層のより浅い部分に荷重がかかっていることからその危険性が迫っているとしている。

 

Credit: Nature Geoscience

 

深部のサイレントスリップは大地震の引き金となる可能性が最も高く、大地震の前にはクリープに関連した前震が続く。地殻はしっかりと互いに結合されており、エネルギーは解放されてスリップを生じないが、浅いマントルの断層同士の結合は、均一でないため、地震の有無によらずスリップが起きる。このサイレントスリップが大地震を引き起こす可能性があることを示唆している。

 

中央海域の拡大中心をつなぐ海洋トランスフォーム断層は、マグニチュードM 7.0までの地震が準周期的に発生することと、スリップの大部分は地震のクリープとして発生し、大地震の発生につながる恐れがある。この研究は今後のサイレントスリップと大地震発生の関係の理解に役立つと同時に、ブランコ断層近郊に地震のリスクが高まっていることを示した点で注目されている。