後期更新生期の「真の極移動」は氷河期の原因か

26.11.2018

Credit: Global Biogeochemical Cycles. 9 (3): 377–389

 

ライス大学の研究チームは、ハワイ諸島の位置を含む太平洋の調査に基づいて、地球自転軸に相対的にグリーンランドが北極に向かって移動した大陸の再配列が、約320万年前に始まった新生代氷河期の原因となった可能性があることを見出した(Woodworth et al., Geophys. Res. Lett. online Oct. 19, 2018)。

 

3600万年間一定だったホットスポット

これまで新生代氷河期(下図)の原因としては、主に大気組成の変化、大陸の再配置、地球の軌道と太陽活動の変化などが考えられている。この研究は大陸の再配置に注目し、ハワイのようなホットスポット(注1)と相対的なプレート運動の歴史から、太平洋プレートの動きを推定した。太平洋のプレートがハワイのプルーム上を移動する際に作られていく火山を調査した結果、ハワイと他の世界的なホットスポットは、過去4800~1200万年の間の3600万年間はほぼ一定であったことから、この期間の太平洋プレートは安定であったことがわかった。

 

Credit: Alley, 2004

 

(注1)ホットスポットは、地球のマントルの深いところから湧き出る熱い岩のプルームで大量の火山活動が活発な場所である。ハワイのホットスポットはマントルの奥深くから立ち上がる熱い岩石のプルームで、4つの活火山と2つの休火山、そして123以上の死火山からなり、ハワイ島の南からロシア東端付近のアリューシャン海溝まで伸びている。マントルは強い圧力と高熱で流動的な岩石の厚い層の上に乗っているため岩盤構造プレートと連動している。このことから太平洋ホットスポットの過去の移動から、プレート移動を推定することができる。

 

下図のa)大陸の移動は、古地磁気の方向として岩石に記録されている。 この場合、極は実際には固定されており、大陸から見たときに移動するように見えるため、観測された極位置の結果のパスは「見かけ上の極移動」(APWP)と呼ばれる。 b)一方、大陸が固定されている場合、同じ変化する古地磁気の方向は、磁極自体の移動を反映していると解釈できる。 これを「真の極移動」(TPW)と呼ぶ。

 

 

Credit: earthref.org

 

氷河期と真の極移動

地球は過去1200万年の間、自転軸に対して相対的に動いている。「真の極移動」と呼ばれるこの変化で、熱帯太平洋の下のマントルが南へ移動し、グリーンランドが北へ移動した。太平洋の海底上の堆積物および岩石に保存されている自転軸に対する太平洋構造プレートの運動(下図)の解析で、後者の動きが現在の氷河期の始まりに寄与している可能性があることがわかった。

 

 

Credit: Rice University

 

ハワイのホットスポットからグリーンランドへの自転軸の動きは、北半球の氷河の発達時期と一致し、氷河期形成(注2)にも寄与した可能性がある。

 

(注2)地球の極は時代を通じて氷で覆われており、厚い氷床は周期的に成長し、100回以上極から後退した。地球は今日、320万年前に始まった氷河期の氷床が極に近づいた間氷期にあると考えられる。

 

地球のマントルは、新物質が絶えず構造プレートに出入りするにつれて常に変化している。沈み込みによるプレートの沈下と再上昇サイクルが粘性の高いマントル異常を引き起こすメカニズムが、真の極移動(下の動画参照)と氷河期の原因となる可能性がある。今回の研究は熱帯太平洋の下のマントルが南へ移動し、グリーンランドが北へ移動した「真の極移動」時期が現在の氷河期の始まりに重なる、すなわち氷河期の原因となる可能性を示唆している。