深刻化するニューヨーク市の格差

Mar. 13, 2015


 

 ニューヨークはアメリカの建国当時から様々な人種と階級の人々が集まる街であった。入国」当初から格差はあったものの、アメリカ・ドリームを達成できる可能性を与えてくれる街でもあった。しかし、それも変わりつつあり、格差は広がり貧困層はホームレス化している。



 アメリカ国勢調査によると、ニューヨーク、マンハッタンの5番街とパーク・アヴェニューの49から70丁目の間に立ち並ぶ高層ハイエンド・マンションの30%は、投機目的やアメリカ移住権の取得が可能なEB-5プログラムによる不動産投資によるものである。特に、注目するのが、下階がパークハイアット・ホテルで上階は9,000ドル以上の居住マンションであるワン57。ほとんどの所有者は、世界中の1%に含まれる富裕層と言われている人たちである。



 マンハッタンの不動産投資ブームの背景には、ドル高、EB-5プログラム、立地条件の良い不動産建設ブーム、量的緩和による莫大な投資マネーがある。中国とは事情が異なっているが、このような、高級マンションを”ghost skyscrapers” (ゴースト高層ビル)と呼んでいる。なぜならば、夜になると灯りのないビルとなるからである(注)。


(注)中国でも不動産バブルにより投資目的の高層マンションは鬼城と呼ばれている。鬼城は夜間は闇にとけ込む暗黒物質のように都市の空に立ちはだかる。


 

 ニューヨーク市のもう一つの姿は、1930年代の大恐慌の時以来の高いホームレスの数である。シェルターの運営, ホームレスの支援活動などを行っている慈善団体のCoalition for the Homelessによると、2014年11月には、60,352人のホームレスがシェルターに寝泊まり、3,357人は路上生活をしている。その数は年々増加しており、空港、駅, 湾港設備と言った公共設備でシェルターを求めるホームレスが急増、深刻な社会問題となったおり、市の対応策が求められている。



 

 上の資料に示すようにアメリカでは、578,424人(2014年 1月の時点)のホームレスがいるとされる。ニューヨーク市は主要都市で最も高く、アメリカ全体の11%である。なかでも、深刻なのが家族世帯のホームレス化で、全体の42%を占める子供のホームレスである。

 

 

  ホームレスの増加の背景には、住宅家賃を負担できない家族世帯の増加である。2007年以降、家賃(中央値)は8.5%上がったのに対して、借主の収入(中央値)が6.8%下がったのである。富の格差は激しくなる一方で中間層から貧困層(ホームレス)に落ち込むと、やり直すチャンスすら与えられないことが問題である。チャンスを与えても働く意欲がない人間が行き着く先がホームレスであったが、今では再出発する気があってもチャンスが与えられない。このことほど不公平なことはない。