アメリカを支えるアジアと中東−留学生とポスドク

Mar. 10, 2015

 

  





      


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 Institute of International Education(IIE)はこのほどOpen Doors Report2014を発表した。それによると2013/14 期間で留学生数は886,052 人で過去最高の8%の伸び率で、世界第一位の留学生(英国の2倍)数となった。この統計はアメリカの高等教育における優位性を示すとしているが、理系の大学の研究開発はアジア、中東系のポスドク(博士研究員)によって支えられている。


 前年度より増加した留学生の数は66,408人で留学生が増えている国は、中国、サウジアラビア、ブラジル、イラン、クエートなど。特に中国とサウジアラビアで全体の73%を占めている。日本人は19,568人(-2.0%)と中国の1/10以下で、留学生は減少の一途である。



 一方アメリカの大学の研究室のグループの集合写真をみればアジアの研究室のようだ。中国人中心のアジア系、トルコ中心の中東系、アフリカ系黒人に囲まれて遠慮気味に白人学生がいる。アメリカの研究室を訪ねるたびにアジア系と中東系のポスドク(注)が増えていくことに気がついていたが、いまでは彼ら無くして研究室は成り立たない。


(注)博士研究員。ポストドクター(Post doctoral research fellow)の略である。日本では博士号を取得しても大学や研究所で正規のポストに就けず、非正規雇用で研究活動を続けざるを得ない任期付き研究者は文部科学省の調査によると、全国で1万7000人である。2012年の博士課程修了者1万6260人のうち、正規職員は全体の52%にあたる8529人で、1年以上の有期雇用の非正規職員は2408人(15%)、一時的な仕事に就いている人は855人(5%)、進路が決まらない人は3003人(18%)である。つまり、非常勤のポスドクと定職に就いていない博士があわせて全体の4割近くになる。

 

 国立大学では、運営費交付金(国から国立大学法人に毎年来る経常予算)削減の影響で、正規雇用教員ポストが減り、一方で、多額の予算を重点的に配備する短期間の大規模研究プロジェクトが急速に増えちゃ結果、プロジェクト雇用ポスドクの人数が増した。日本では非正規雇用問題の一角をなす存在だがアメリカではテニュアトラックのひとつとしての地位が確立し研究開発を担っている。



 アメリカのポスドク雇用はコミュニテイ内の情報交換によるところが大きいが、求職と募集がリクルート会社、例えばPostdoc.Jobs.com では90日広告を$195で掲載して斡旋が行なわれる。


アメリカのポスドクは研究の原動力であり、特に医学ポスドクは最大5年契約$42,000でテニュアトラック(ファカルテイへのキャリアパス)、Associate Professorへの道として一般的である。ポスドク実態の把握は困難で全米を網羅するポスドクの統計は無いが、テンポラリビザの53.6%はポスドクであることからすると、相当の数のポスドクがいることになる。


 各国のポスドク達は大学の研究活動に欠かせない存在で豊富な研究資金の関係がもらえるライフサイエンス分野が54%を占め、理学関係は28%である。それでも保険、休暇、保育、サバテイカルを保証されることから、アジア勢の拡大目立つようになった。アジア、中東系のポスドクは研究開発を支えていることからも実体経済同様にここでも空洞化が起こっている。