世界で最も高価なタワーマンション−ONE57

Mar. 15, 2015


 

 

 ONE57は世界で最も高価なタワーマンション(英語ではCondominium)である。建物の高さでは868mのドバイにあるブルジェハリファが世界一で、その108階のペントハウスは世界一高層階といえるが価格では、ONE57が世界一となる。上の写真は真下にセントラルパークを見下ろす眺望である。


ONE57とは

 ONE57は80、90階はペントハウスでその価格は$100Mというから約120億円という。これまでのニューヨークで最も高価なペントハウスは$88Mであった。今回販売された世界最高額のペントハウスは最上階89、90階で82階の価格$56.1Mの倍となる。


 ONE57(West 57th Street)最上階に誰が住むのか憶測が絶えなかったが、ペントハウスの謎の購入者はカタール首相(Hamad bin Jassim bin Jaber Al Thani)といわれている。マンションのデベロッパーは購入価格とともに購入者の身元を明らかにしていないが、中東勢かアジア勢かのどちらかであることは予想していた。


 

NY不動産バブルの背景

 ニューヨークの不動産価格の急騰の背景には富裕層がこぞってタワーマンションを購入することがある。資産を安全な不動産に転換しようとする動きが富裕層に広がっている。量的緩和紙でだぶついた紙幣が行き場を失って不動産に流れ込んでいるのだ。腐敗した中国官僚が資産を国外に移して脱出しているし実際、このOne57の購入者の半数が外国人である。国外から富裕層が超高層タワーマンションを投資目的で購入しているのである。


 

投資に使われるEB-5

 永住権(グリーンカード)はお金で買える。米国内に投資及び移民規定を満たせば取得することが1991年から時限立法化されているのである。EB-5規定とは

(1) $100M以上を投資して2年以内に10名の米国人を雇用する。

(2) 失業率が平均より1.5倍の地域に$50M以上投資して2年以内に10名の米国人を雇用する。

(3) 米移民局が指定した地域センター(Regional Center)内の新しい事業あるいは経営困難に陥っている事業に50万ドル以上の投資を行い間接的に雇用を創出する。


 昔は全ての移民がエリー島に集められ移民審査を受けた。当時も移民審査で一番重要なことは生活をしていくだけの資金を所持しているかどうかだったが、これは現在のEB-5投資永住権プログラムに引き継がれている。



 

 これらのいずれかの投資を行なえばグリーンカードが取得できる。

 

 例えば$100Mのペントハウスを購入して10名のハウススタッフを雇用すれば(1)は簡単に満足できる、ということになる。カタール首相がそれをやるかどうかは別にして、EB-5投資は米国への莫大な投資となり都市開発等の大規模事業に拍車がかかった。その結果、ニューヨークの摩天楼は2020年には現在と大きく異なると予想されている。


 EB-5は斡旋業者が介在するため事業経営の知識がなくても、(たとえ英語が話せなくても)スムースに事が運ぶ。このような制度でつくられた都市部に摩天楼は蜃気楼のようなものである。富の格差を国境を越えて助長するばかりで、解消の方向とは真逆である。そうした現象が世界中の大都市で起こりつつある。富裕層を優遇すれば社会全体が潤うことで格差を少なくできるのか疑問だ。