サウジアラビア主導の10カ国による連合部隊が、イエメンで空爆を実施している中、エジプトで開催されていた外相会合(3月29日)で、アラブ連盟は「アラブ連合軍」を設立する決定案に合意した。
アラブ連盟は21カ国と1組織(PLO)で構成される参加国間(注)の協議、政策調整を行う関係強化と安全保障を目的とする地域機構である。国連やEUのように専属の軍隊組織はもたない。過去に一度、1947~1949年の第一次中東戦争の際にアラブ解放軍がアラブ諸国によって形成された。その際の軍隊は、アラブ諸国からの6,000人のボランティアで構成された。その後は解散、それ以降に形成された連合軍隊組織が今回のイエメン空爆の実施に形成された連合部隊である。
(注)GDP順による加盟国:サウジアラビア、UAE、エジプト、クウェート、アルジェリア、カタール、イラク、モロッコ、レバノン、オーマン、スダン、リビア、シリア、ツーニジア、イエメン、ジョーダン、バーレン、モーリタニア、ソマリア、ジブチ、コモロとPLO
今回アラブ連盟が設立に動く「アラブ連合軍」は、加盟国の各国軍隊から派遣される400,000兵で形成されるエリート部隊に加え戦闘機、軍艦の軍隊となる。「アラブ連合軍」に関する規模、予算、指令経路などの詳細は4ヶ月後に公表される予定である。指令本部はカイロ(エジプト)またはリアード(サウジアラビア)に設置されることになる。
Global Firepower(GFP)による2014年のアラブ諸国の軍事力の順位は以下である。
アラブ連盟の加盟国をみても、イスラム教シーア派とスンニ派に分かれている。「アラブ連合軍」の設立はエジプトとサウジアラビアが中心と動いていることから、スンニ派の軍勢力となる可能性が高い。では、この動きは何を意味するのか?
イエメンは中東戦争の序幕と考えれば、この時期に「アラブ連合軍」の早急な設立が理解できる。サウジアラビアとイランはシーア派とスンニ派の対立構造だけでなく、今後は中東のエネルギー供給国(注)としても激しく争うことにもなる。しかし、提案されている、400,000人の兵力でも、宗教教指導者を指揮官とする士気の高いイランの軍隊の方が優勢であると思われる。
(注)イランの原油埋蔵量は世界第4位、天然ガスは世界第2位である。