交流送電の父として知られるニコラ・テスラ(上の写真)はエジソンに対比される天才であった。イーロンマスク率いるテスラモータースの社名もここから来ている。あまりに独創的な彼の発明とアイデアは早すぎて時代がついていけなかったともいえる。
アイデアに技術が追いつかないと実用にはならないが、時代とともに状況が変われば実現する可能性が高まる。中でも無線送電の技術はこれまで(民間目的には)実用化されていないが、実用化されれば2050年までに倍増するエネルギー需要を(宇宙発電と組み合わせて)満たす可能性がある。
J.P.モルガンの援助によりWorld Wireless System(日本語では世界システムと表記される)と呼ばれる無線送電を提唱した彼は、ロングアイランドに鉄塔を建てて長波電磁波(150kHz)の電力送信を試みた。基本的にはテスラのアイデアと同じ。HAARPもこのアイデアに近いが、こちらは電離層(電子レンジと同じマイクロ波)まで届く強力な高周波送信を行なっている。
2015年3月8日、JAXAは55m離れた2点間でマイクロ波送受信に成功した。マイクロ波送電には高度の指向性と位置制御の精度が要求される。この技術を宇宙発電と組み合わせれば、効率の良い太陽光発電を大気圏外で行い、電力を地球上の受電スポットに無線送電することによって、原子力に頼らずエネルギー需要を満たすことができる。
宇宙発電では太陽電池パネルを並べていくと大気の吸収がない分効率が上がり、原子炉1基(100万kW)に相当する太陽光発電ができる。衛星の打ち上げと宇宙での発電設備の建設となるので、開発コストが高いが原子力のように環境汚染がないため、各国で研究開発が進められている。
太陽電池パネルは既存の技術で宇宙用のものがつくられているので、コストを別にすればネックとなるのは無線送電技術になる。今後、マイクロ波パワーを上げた実用化実証試験が続くが、エネルギー問題を地球規模で解決する有望な方法と考えられている。