キューバは半世紀に渡るアメリカとの国交断絶に別れを告げようとしている。独裁政治が長く続いた結果、多くが低収入で貧困であるにも関わらず、平均年齢29歳という若い国民の目は輝いている。通りを歩いてもたむろする若者が多いが、路上生活のホームレスをみかけることはない。
Havana。意外なことに嫌悪したはずの1960年代のアメリカがここにはある。若者はアメリカ文化に憧れ、中古のフルサイズカーを乗り回す。キューバを舞台にした映画は多く、いかに人々がカリブ海の楽園キューバに愛着を持っていたことが想像できる。
老人と海
1952年の老人と海(The Old Man and the Sea)はヘミングウエイの晩年の大作で舞台はハバナの近くの漁港。巨大なカジキをつり上げた老漁師の話は誰でも読んだことがああるだろう。ヘミングウエイはキューバを愛した。ヘミングウエイはキューバに22年間住み、ほとんどの作品をこの地で書いた。アメリカ人でありながら、アメリカがまたキューバと国交断絶にありながらもキューバの人たちはヘミングウエイを暖かく迎えた。
ヘミンングウエイは晩年、自宅をキューバに最も近いマイアミ半島の先端にある島キーウエストに構えた。ヘミングウウェイの家の近くには彼が通ったバーがあるが、ここでハバナのカクテル「モヒート」でキューバに思いを寄せていたのであろう。
HavanaとChe
ハバナ(Havana)は1990年製作でハバナで行なわれる世界最大のカードゲームに酸化したギャンブラーと革命家女性の恋愛を描いた。一方、チェ(Che)はそのタイトルの通り、革命家ゲバラの半生を描いた2008年の映画。映画は2部作でキューバ革命までを描いた「チェ28歳の革命」とボリビアで戦死するまでを描いた「チェ39歳 別れの手紙」からなる。革命家ゲバラはゲリラ部隊の指揮をとりフイデルカストロとともに戦い、1958年キューバ革命を成し遂げると世界革命に身を捧げ、紛争各国の反政府組織を支援したが、1967年にボリビアで生涯を終えた。
The Good Shepard
映画の中では貧しい現実にも関わらず、未来の理想社会に憧れた若者達が懸命に生きようとするが、大国の勢力争いに翻弄される様が生き生きと描かれている。アメリカにとってもJFケネデイにとっても、1961年にCIAが亡命キューバ人を武装勢力として侵攻させたが失敗したピッグス湾事件は外交上の汚点となった。2006年の映画グッドシェパード(The Good Shepard)ではピッグスワン事件の背景が克明に描かれている。
アメリカの中のキューバ
ハリウッド発の多くの映画は皮肉なことにキューバを好意的に描いている。実際フロリダ州にはキューバ移民が多く、キューバ系移民の票は選挙に重要な役割を果たす。2012年の大統領選ではオバマがキューバ系アメリカ人の50%を獲得したことはフロリダ州をとるのに重要だった。マイアミの通りを歩くと鮮やかなパステルカラーのアールデコ調の建物が目立ち、文化的にもキューバを無視することはできない。またMLBもはじめスポーツ界もキューバ選手が果たす役割は大きい。
結局、社会主義への嫌悪はフイデルカストロやチェゲバラに向けられるのみでありラウルが率いる現実のキューバと国民や文化への愛着は揺るぎないことは国交正常化に60%が賛成していることから明らかである。オバマにとっては国交正常化は避けることのできない流れであったようだ。下の写真はアメリカにあるキューバ、"Little Havana"。