世界地図は変わらないようでも、分裂独立を果たす国や統合される国によって常に地図は書き換えられている。ヨーロッパでは、国家の分裂や独立を求める地域が増えつつある。9月18日のスコットランド分裂独立を問う住民投票の結果によっては、さらに分裂独立を求める動きが広がる可能性がある。
1990年以降だけでも、ソ連崩壊で15の国が分裂独立、東欧革命後のユーゴスラビア紛争から7カ国が分裂独立、その他にも、統一ドイツ、太平洋諸島信託統治領(アメリカ)から北マリアナ諸国、ミクロネシア、マーシャル諸国とパラオが分裂独立、アフリカではイェメン統合、南スーダン、ナミビア、エリトリが分裂独立と新たに13カ国が形成された。
ヴェネツィア
ヴェネツィア人の89%は、非正式ではあるが、住民投票でイタリアからの分裂に賛成投票した。中世には、「アドリア海の女王」、「アドリア海の真珠」と呼ばれたヴェネツィア共和国の都市として栄えた過去の歴史がある。ローマやイタリア南部の深刻な不況は、北部にも影響を与えている。
失業率が6%に対してローマとイタリア南部の失業率は26.2%である。政治汚職、無能な経済政策、増加する債務と税金、イタリア政府に対する不満が増していることを反映した投票であった。
カタロニア州
分裂独立を問う住民投票は2014年11月9日である。カタロニアはスペインの中で、最もGDPが高い地域の1つで、自治政府の債務が最も低い。スペインのソブリン危機の状況下で、他の自治州より経済政策上、不当に扱われているとの思いから、独立を求める勢力が増している。
つまり、市民が支払っている税金に対して、提供されている公共サービス、社会福祉、教育、医療、年金などが200億ドルも低いといわれている。カタロニア州はスペインにとって、「最小限の牧草を与えて、最大限に牛乳を絞り出す牛」と例える人もいる。独立すれば、スペインのGDPが30%減少すると想定される。
スコットランド
スコットランドは1707に英国に統合される前は、独立国家であった。住民投票は9月18日に実施される予定で、その結果は欧州全域に大きな影響を与えるとみられる。英国にとって、経済的混乱と通貨問題に留まらず、EUとNATOにおいての影響力にも影響をおよぶ可能性さえある。さらに、分裂独立は、ウェールズにも独立運動につながるきっかけとなる可能性がある。
最新の世論調査では、独立に「賛成」との回答は38%と1ヶ月前と比べ4ポイント上昇、「反対」は47%と2ポイント上昇した。約14%が態度を決めていないことから、まだ結論を出すのは難しい。だが、労働者中心の地区での調査によると、「賛成」が44%、「反対」が25%、「決めていない」が31%であった。貧困の高い地域ほど、独立に賛成が高くなる。投票まで1ヶ月を切ったが、今後のEUの方向性にとっても結果は大きな影響を及ぼすであろう。
今、EU諸国のなかで、経済的に豊な地域とそうでない地域、債務比率の高い自治体とそうでない自治体といった格差をめぐり、一般市民が分裂独立を求める動きが広がりをみせている。文化的な背景もあるが、経済的な理由が主である。このような動きは、特に、地政学的、経済的、社会的な変革期に起こりやすい。いま国家と地方自治の意味が問われている。