Photo: Burundi TEKA
珈琲とクーデターの国ブルンジ
アフリカ中央の小国、ブルンジは人口1,000万のアフリカでも最貧国、幸福度調査国では調査国中で最下位。歴史的には植民地支配から独立後に貧困と内戦が待ち受ける「貧困の方程式」があてはまる。
植民地と独立を天秤にかけた末、アフリカの国々はほとんどがこの方程式に従う。が、そんな小国で1夜にしてクーデターが失敗した。
ブルンジは1962年のベルギー独立からまもなく王政が廃止され共和制となったが、フツ族とツチ族の対立によって内戦とクーデターが繰り返されてきた。ツチ族(注1)は少数ではあるが軍隊の主力をなし多数派のフチ族を抑え込もうとした。フチ族の懐柔政策も効果がなく不安定な政権が貧困化に追い込んだ。
(注1)ツチ族
アフリカ中央部のルワンダ、ブルンジに住む3大民族のひとつ。約250万人とされるが、フチ族との抗争が激しく1994年のルワンダ紛争では数10万人が虐殺された。多数派のフチは農耕民族であるのに対してツチは狩猟民族で軍によりフチ支配をすることが紛争の原因である。植民地支配時にはドイツ、ベルギーの手先となり民衆を支配した。
内乱の背景
共和制は選挙多数が政権を握る。多数民族のフチ族が政権をとっても、少数派のツチ族が国軍をおさえるため不安定な政権となる。さらにフツ族のなかに反政府組織、民族解放軍が反政府運動を展開し、混乱を極めていた。
2015年5月13日、フチ系のヌクルンジザ大統領が隣国タンザニアに滞在中の不在時を狙ったクーデターで首都ブジュンブラの街にはバリケードが築かれ激しい戦闘で騒然とした。軍部が一体でクーデターに参加しなかったことが失敗の原因であった。
Photo: Cuba Debate
結局クーデターは失敗し大統領(上の写真)は帰国して騒ぎが収まったが、フチ政権対ツチ軍部の対立構造は脈々と続いている基本的な政治リスクである。
ブルンジを救う珈琲
ブルンジはベルギー植民地時代、1930年ごろから標高1200m以上の高地で栽培され、良質のものが日本にも輸出されている。国民の半数以上が珈琲栽培に関わっているという。珈琲栽培は植民地時代に先進国が残した唯一の遺産だ。
ブルンジが真の独立を遂げるには多数派、少数派の垣根を越えた安定政権をつくり国内産業を守ることが「貧困の方程式」から脱却する一歩である。世界もこの小国に注目し、利権の犠牲にならないよう注意を払うべきである。ちなみに珈琲通の間ではブルンジ特有の甘みのある「ブルボン種」の豆が人気。珈琲豆の栽培には高地が適しているとされる。ブルンジ珈琲に興味のある方は詳しくは珈琲専門ブログを参照されたい。ブルンジ珈琲の一杯がクーデターから人々を救うかもしれない。
先進国が珈琲豆の栽培ノウハウを指導し、コロンビアやブラジルのように国内焙煎が可能になれば、高品位の珈琲豆の輸出で貧困から抜け出せるだろう。しかし先進国の珈琲メジャーやスペシャルテイ珈琲メーカーの利益と相反するだろうが、自国産業を守らなければ貧困を脱することはできない。
貧困国の中には資源に恵まれる場合もある。アフリカ中央に位置しウラン、銅、コバルト、ニッケル資源が豊富とされるブルンジ。これらの資源を狙う大国が関心を示せば、利権の争いで武器供与の恐れがある。