スマホやタブレット、そしてそれ以前からあるモバイルPCたち。これらはいずれも動画やイメージ、オンラインゲームなどの膨大なデータをやり取りする。過去からすれば桁外れのデータ通信量の要求にキャリアが提供する3G、4G(注)でも追いつけない。若い人が集まる繁華街に迷い込むととたんに通信速度が低下する経験があるだろう。そういう場所であたりを見回すとスマホと格闘している。通信速度の不足にイライラしているのか真剣である。
(注)LTEの4Gは正確には3.9Gで、理論上の最大値は下り326Mbps、上り86Mbps、キャリアの公称は下り75Mbps、上り25Mbpsだが、キャリアと場所、混み具合に依存してこの値よりずっと低い。
テルストラのホットスポット
無料で使えるWi-FiホットスポットはStarbucksやSoftbankを代表として全国的に増えて来ている。しかし期待に答える通信速度が安定に供給されるわけではない。データ通信のニーズは世界的に共通の問題である。
このほどオーストラリア最大の通信会社、テルストラ(Telstra)は全国200万基のWi-Fiホットスポットネットワークを構築することになった。このためには携帯とスマホの普及で、使用率の低い(従って利益率の低い)公衆電話機の設置場所を使う予定だ。
この動きはオーストラリアに限ったものではなく、米国でもニューヨーク州は公衆電話機をLinkNYCと呼ぶ無料Wi-Fiスポットに改装するという。もちろん商魂逞しい米国のことだから、IT産業の雇用に一役買う事も狙っている。またメンテにはIT技術者の大量雇用が必須なので収益率の高くないRed Ocean(通信ビジネス)にいる技術者たちには朗報かもしれない。
Starbucks Wi-Fiの通信速度
ちなみにStarbucks Wi-Fiの通信速度を実測すると12.44Mbps(上り9.91Mbps、下り12.44Mbps)である。LinkNYCで目標とする1Gbpsというのは4Gの限界値を越えており、Starbucks Wi-Fiスポットの約100倍高速に相当する。しかし1Gbpsを実測で満足するのは容易ではない。光回線では100Mbps、一部は1Gbpsといわれているが、地域、混雑度によっては2桁もダウンすることもある。筆者のPCは実測で下り75Mbpsであるが、高画質動画でも50Mbps以上有れば十分である。
しかし外出先のWi-Fiスポットはたいてい期待はずれである。動画サイトでは速度に応じて画質を落とすので、動きが雑になり画質も失われる。一方、キャリアの4G接続は下り75Mbpsというが、実際には携帯各社で異なり、20-35Mbpsというのが実情だ。しかもそれが混雑度でさらに低下する。パケットのコストを考えると、キャリアにデータ通信をまかせることに限界が生じることからも、また高額なパケット料金から逃れるためにもWi-Fi無料スポットに人は流れる。そのためWi-Fiの公共事業化はキャリアの存在を揺るがすかも知れないのだ。
LinkNYCの場合はコンテンツへのアクセスへの広告収入で賄われる受益者負担だ。LinkNYCのような試みは国内では、特区を考えない限り難しいだろうが、もし仮に無料Wi-Fiスポットを公共施設とみて、地方税で整備したらどうなるだろう。音声電話もIPやSkype、Facetimeで置き換えられる。つきつめればキャリアと契約する理由がなくなるのだ。
ホテルはすでにワイアレスホン
欧州でシェラトンに宿泊したとき見慣れたケーブルのついた電話機がないのに気がついた。写真のWi-Fi電話機に置き換わっていたのだ。おそらくこうすればホテル内を移動しながらでも部屋につながるべき電話にでることができるので、便利なのだろう。確かに一人で旅すれば大事な電話がラウンジでくつろいでいても受けられるのはありがたい。
結論をいえば無料Wi-Fiスポットの整備でユビキタスに一歩近づくことは間違いない。接続できても通信コストが高ければ無意味だが、インターネットは無料である限り、キャリアからの請求書におびえる必要は無い。キャリアというものが存在意味を失い消滅するからだ。ところで東京の都バス全路線で無料Wi-Fiサービスが180分という時間制限で使える。また同時に月額300円でdocomo
Wi-Fiサービスも使える。またこれから地下鉄でもサービスを始る。