アジア諸国で巨大ショッピングモール(メガモール)が建設ラッシュであることは伝えた。トップ36の75%は発展途上のアジアに建設されている。とてつもない規模のメガモールはコンテンツの豊富さ(テナント、レストラン、レクリエーション)で、人々の購買欲を満たすとともに、手の届かない高級ブランドを見せつけて人々の労働意欲をかきたてる。これは経済の活性化に一役買っている。上の写真はフイリピンのメガモール、モールオブアジア。
発展途上国に何故メガモールなのか
何故、メガモールは発展途上国を選んだのか、といえば経済成長時の国民の共通にみられる旺盛な消費と購買力があるからだ。高度成長期の日本においても米国流の消費文化にあこがれ、勤労に励むことで、「いつかはクラウンに」という表現に代表されるように、中流階級へ勤勉に努力して到達すべく一団となって働いた。「会社が生き甲斐」の世代である。手に届かなかったTVや車がやがて手に入ることで、人々は明確な中流階級の自負と証明を得ることができた。
世界ランキング7位のマレーシアの代表的メガモール(Mid Vally Megamall)に訪れる年間の客数は国内人口を遥かに上回る3500万人。ここでは核となるイオン、カールフル(イオンが買収)、マレーシアのデパート(メトロジャヤ)を中心に、400のテナントがある。またレクリエーション施設として映画館、ボーリング、ジム、フードコート、ペットショップなどがある。さらに富裕層を狙ったアネックスには高級ブランドショップ、デパート(伊勢丹、ロビンソン)が追加で建設された。メガモールの特徴は幅広いコンテンツにある。買い物客の伸び率はそれでも8%と高い水準にある。
メガモールには何でもある。氷の山のペンギンは子供達に大人気。このほかアイススケート、ボウリングなど思い思いの施設で子供達にとっても長時間滞在が苦ではない。遊ばせておいて若い親達はショッピングに気兼ねなく行ける。
高級化する都市型モール
一方で都市型モールは規模こそメガモールに及ばないが、高級感を煽り買い物客にステータスを意識するような満足感を与えるように高級化の動きが止まらない。高級品を扱うテナントをいれ、高級レストランを呼び込む。建物のイルミネーションはひと際目立つ。日本がこのカテゴリで出遅れた原因は高級デパートと競合するからだ。
都市型モールは夜間の営業時間が遅いので仕事帰りの若い世代を呼び込む。豪華絢爛な都市型モールに滞在することで、富裕層にいることを意識させる工夫がいっぱいである。高級ブテイック、コズメショップ、ネイルサロン、エステ、カフェ、シートのゆったりした映画館、IMAXシアターなど。これはしかし虚像かも知れない。
都市型モールは若い世代向けか
高級都市型モールもやはりアジアに多い。上海ではK11、iapmが典型である。こうしたモールでは、フロアにまたがって店を出せる余裕を持たせたテナント配置などの一般のモールと差別化をはかる。実際にiapmに行ってみると確かに豪華な内装に驚くが、活気がみられない。虚像である印象は強くなった。欧州でも都市型モールラッシュである。例えばシュツットガルトにはGerber、Milaneo、Konigsbau-Passagenなどが、争って建設されている。これらは若い人には人気のようだが、年配の富裕層は無視する。都市型モールは若い世代向けで、意外にも古くからシュツットガルトに住む人達には不人気だ。
富裕層は都市型モールが嫌い
上の写真はシュツットガルト駅前の高級ブランドショップ。富裕層の女性達は車を乗り付けて買い物を済ませていく。店も大事なお得意様を大切にする。店の宣伝をする必要もない。彼らは駅前の広場にある商店街でショッピングを楽しんで育った。駅前には高級ブランドショップが個々にブテイックを構え、そのすぐ隣には生鮮食糧や花屋があって、自然な商店街をつくっている。写真のようにブテイックとこうした店が近くにあって便利である。こうした古い商店街に慣れ親しんで来た豊かな世代にとっては、近代的な都市型モールは虚栄心で飾り付けた虚像に映るのかも知れない。
日本の商店街が落ち込んだのは、近代化ができないことが原因で、大型店舗が出きたせいではないとする意見は、間違いだろう。都市型モールは実像か虚像かという結論は出せない。世代によって価値観が分かれるからだ。都市型モールとメガモールは、勤労と消費を支えるエンジンで経済発展のバロメーターであることは確かだ。