ニュースウイーク誌の最新記事に、「原油価格の下落に歯止めかからず、ベネズエラのデフォルトリスク高まる」、とある。これ自体は自給自活の米国を除く産油国全てに共通する原油価格下落の影響として事実なのだが、ベネズエラが「負け犬」だという表現は何処から来るのだろう。
まるでサウジアラビアと米国だけが勝ち組とでもいいたそうな意図を持った記述にみえる。原油価格下落で経済が悪化したのはロシアを筆頭に産油国一般傾向だし、ベネズエラがデフォルト危機にあることも事実である。しかしベネズエラの原油埋蔵量はサウジアラビア以上とされるし、天然ガスの埋蔵量も豊富で、将来性においてはピークをすぎたサウジアラビアより将来性が高いのである。
豊かな自然ーオリノコ川の恵み
ベネズエラとは一体、どのような国なのであろうか。エンヤの歌で有名なオリノコ川はベネズエラ南部のパリマ山地に水源を持つ南アメリカ大陸で3番目の大河である。エンヤがこの川に魅了されたように川に沿っての肥沃な大地は動植物の天国で人間の影響を受けずに自然が保護されている。
先住民譲りの独立心
ベネズエラの歴史をみるとスペイン占領時に先住民の勇敢な首長グアイカイブーロがスペインに抵抗したことや、植民地から独立戦争で屈強なスペインに戦いを挑んだボリバルに代表される独立心の強さが民衆に根ずいている気骨のある国だ。植民地から独立した多くの国同様、独立後の政権は安定せず、軍事政権を経るが1959年に民主的な選挙で成長を遂げることになる。1960年に設立されたOPECに産油国として積極的に加盟し、GDP10%の驚異的な経済発展を遂げた。
しかし豊富な原油や天然資源により莫大な貿易利益がありながら貧富の格差、累積債務が増大し、不安定な政権は1999年からの反米ボリバル主義のチャベス独裁政権を生み出した。チャベスはG.ブッシュに逆らったためCIAの仕掛けたクーデターで失脚するが、民衆の強力な支持を受けて復活した。
豊富な石油埋蔵量
こうしてみるとベネズエラは親米の多い南米にあって、西欧からの独立精神の強い、反米の旗手であったことから、米国とサウジアラビアにとっては厄介な存在であったようだ。さらに2014年に原油生産量がサウジアラビアを抜いて世界1位に躍り出ると、シェールオイルを含む北米の原油増産とともに石油資源の体制を揺るがしかねない存在となったのである。
ニュースウイーク誌の表現「負け犬」や「デフォルトの危機」というのは、米国の願望であり、真実から遠い。先住民の首長、ボリバル、チャベスと続く旺盛な独立精神はCIAの陰謀にも屈しなかった。原油価格の下落の行き着く先は石油資源の新体制となるだろうが、ベネズエラの豊富な埋蔵量と独立精神は資源大国として誰も無視できない。