Photo: Countercurrents
英デービッド・キャメロン首相は仏オランド大統領に続き、イスラム過激派組織のことを「ダエッシュ」(DAESH, DIISH, DAISH)の呼び名を使い、呼び名を巡り混乱を招いている。議会下院で、ダエッシュを標的とした空爆の参加への動議の可決を2日に求めた際に使った。キャメロン政権は今後、ダエッシュの呼び名を使うと宣言した。
これまで、同じイスラム過激派組織をISIS, ISIL, IS などの呼び名で呼んできた。ダエッシュはアラブ語(al-Dawla al Isalamiya al Iraq wa al Sham)の頭文語であるが、発音した時、「押しつぶす、踏みつける」の意味を持つ言葉に聞こえることから、イスラム過激派組織は嫌う呼び方とされている。
AQI、ISI、ISIS、ISIL、IS
テロ育成キャンプやテロ活動を行っていたアル・ムサブ・ザルカウィーのタウヒードとジハード集団がアル・カーイダ組織と合流、1999年には「イラクの聖戦アル・カーイダ組織」(Al-Qaida Iraq:AQI)と組織名が変わる。当初の目的はフセイン政権の打倒であった。2006年に現在のリーダーであるアブ・バクル・アル・バグダーティーは組織をISI、イラク・イスラム国(Isalmic State in Iraq:ISI)と名前を変え、2013年にはISIS (Isalmic State in Iraq and Syria)と変更する。最後の頭文語のal Shamまたはシリアはシリアを含める広範囲の地域を指し、その性格も反アサド政権の組織となっていく。
その後、ISIL (Isalmic State in Iraq and Levant)と再び変更、最後の頭文字Lのレバントにはシリア、レバノン、イスラエル、パレスチナ、ヨルダンの地域を含んだ。2014年に最後のIS頭文字を取り、過激派組織はIS(イスラム国)と名称した。これはカリフ制、つまり預言者ムハンマドの後継者とするアブ・バクル・アル・バグダーティーをイスラム共同体の指導者とし、イスラム国家の樹立を宣言したことになる。
ISや ILを外すことで、イラクやシリアに限らず、全てのイスラム教徒にイスラム国家拡大のために聖戦(ジハード)への参加を求め、イスラム法に基づき世界を統治することを目指す野心を反映している。
勢力と支配下領域が拡大するたびに、呼び名を変えている。「イスラム国」と名称しても、国際的に承認された国家でもなく、イスラム教の宗教組織でもない、過激派組織であるため、呼び名は確かに問題である。
Source: TELEPOLIS
マスメディアの間でも一貫性がない
各国政府やマスメディアにおいても、イスラム過激派組織の呼び方は異なる。ロイター、国連、BBC、中東のアルジャジーラはISISを使い、APはISISからISIL,そうしてIS, ISグループと呼び名を変えている。ニューヨーク・タイム、タイムズ、ガーディアン、ワーシントン・ポストはISILやISと呼ぶことが多い。ドイツにおいても、ISIS,IS, ISILと呼び方は異なる。
イスラム過激派組織の呼び名が統一されていないことは、過激派組織のプロパガンダに翻弄されていることを表している。各国政府の間で適切な呼び名の統合を図るべきだと思われる。名称を頻繁に変更することで、各国の対応を撹乱しハッキング対策に使うなど、巧妙な戦術でもある。