Photo: Veterans Today
米軍は6日に、ロサンゼルス国際空港の太平洋側を一週間の飛行禁止区域に指定した。住民には、飛行ルートが太平洋側からではなくロサンゼルス市中心の南西のイングルウッドに変更されたことから、一週間深夜の航空機の騒音が発生すると通知を出した。翌日の7日には、北から南カルフォルニア州、アリゾナ州、ネバダ州で隕石またはUFOのような物体が空を横切るのを数万人の住民が目撃、ソーシャルメディアで話題となった。下の動画を参照。
騒ぎを沈静化するため、海軍は太平洋に配備されている原子力潜水艦のKentucky(USS Kentucky)が演習の一環として、トライデント・ミサイルII(下の写真)を発射したことを発表した。偶然に冷戦以降、米国・NATOの36カ国と36,000人の兵士を含む最大の合同軍事演習「Trident Juncture」が終了すると同時に行われたのである。
トライデントミサイルは米国と英国海軍の潜水艦に装備される水中発射型の核弾頭ミサイルで、射程7,400km以上、14発の核弾頭を積載したICBM並みの命中精度を持つ。
Photo: Lockheed Martin
では、なぜロサンゼルスの空中で、数万人の住民がよりはっきりと目撃できる深夜にミサイルの演習が行われたのか?人口密集地の上でミサイルを飛ばすのは戦術的な意味をもつのか?中国やロシアに向けて米国の軍事力を見せつけるために行ったのかは不明であるが、謎が多い演習であった。
カルフォルニア州空中をミサイルが飛んだのは今回が初めてではない。2010年に英軍事・軍需産業情報誌ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーは、中国の海南島沖から「ジン型」ミサイル原子力潜水艦が射程8,000km以上あるJL-2弾道ミサイルを発射、カルフォルニア州を横切ったと報告している。
2014年には、ロシアの偵察機がロサンゼルス上空を飛行、ロサンゼルス国際空港でのシステム障害やFAA設備間の情報伝達を担う連邦通信インフラに障害を引き起こしたと、米連邦航空局 (FAA)
が報告している。また南沙諸島近海に米海軍の駆逐艦が派遣されたことに対抗して、中国海軍の潜水艦が米国太平洋岸に接近させたことで米中対立が深まっている。
住民の目に付くところに軍隊が出没することが最近多いが、軍の存在を市民に見せつければ動画が即時にアップされて敵対国を含む世界中がその動画をみることになる。ISが動画を頻繁にアップするのもプロパガンダとして最大限にインターネットを利用したいからだ。シリアの内乱では戦車にGoProを取り付けて撮影された動画が話題になっている。