Photo: um jeito manso
ドイツはギリシャ政府に脱税目的で、スイス銀行で口座を持っている10,588のギリシャ国籍の個人や法人の顧客リストを渡した。ドイツ国税局から入手したリストを元に、税金を回収して税収を増やし、財務状況の改善を図る予定である。
銀行預金で脱税摘発
公表された顧客の口座残高の総額は約3.6億ユーロにのぼる。顧客リストはギリシャの富裕層の人名録とも言われている。2010年にも、ギリシャ政府にHSBC銀行のスイス、ジュネーヴ支店のギリシャ国籍の顧客2,000人の名簿がフランスの財務大臣から提供された。このリストは、2007年にHSBCの社員が顧客データを盗み出し、フランス政府当局が入手、フランスで脱税の摘発に活用されたとされる。情報は2010年にはギリシャを含めて他国の政府にも提供された。
その際、情報は活用されなかったが、今回は積極的に脱税摘発に動くとみられる。まずは、国の増収の標的となったのが高所得層である。
資産申告の義務づけ
2016年1月1日から、ギリシャ国民は資産の申告が義務づけられる。固定資産税、自動車税、証券取引税などの他に、各世帯が保有する総資産が課税の対象となる。家庭で保管されている現金(タンス預金)、総額15,000ユーロ以上、宝石、美術品などの高額製品の総額が30,000ユーロ以上、国外問わず銀行預金の総額、国外問わず銀行の貸金庫(中身、銀行名、支店名)を全て申告しなければいけなくなる。
「資産申告」と題する新しい項目で、毎年Taxisnetで電子申告が義務づけられる。所得税の確定申告と合わせて、課税が課せられる。導入に関して、多くの問題があるが、その中の一つは記入する申告書が56ページであること。その他にも、宝石、美術品の価格評価、高額の贈り物など購入していない商品の評価、申告を拒否した場合や課税を納めない場合の刑罰や財産没収の可能性などの詳細が明らかとなっていないことである。国の財政事情が悪化すれば、あらゆる手段で税収を増やすが、ギリシャの例で明らかである。
Source: incartoons
債務国の将来
日本は2016年からマイナンバー制度が導入されることになる。3年後をめどにマイナンバーの銀行預金口座への登録も検討されている。インターネット契約やクレジットカード契約、あらゆる経済活動にマイナンバーが使われるようになれば、政府は個人の全て動きを監視できる社会となっていくのは時間の問題である。結局のところ国の債務を返済するのは国民(の預金)しかない。国民がこれまで蓄えた預金を政府は破綻処理に使うことになる。
観光産業しかないギリシャと技術立国の日本を比較できないと考える人やメデイアは多い。しかしモノが売れなくなった時に、債務をどのようにして返済するのか考えてみてほしい。マイナンバーによって(ギリシャのように資産申告をしなくても)政府が個人資産を把握して、いつでもベイルインを設定できることになった。破綻処理に向けて個人資産の共有(共産化)への道ができたということを国民は認識する必要がある。ギリシャをみれば債務国の将来がみえてくる。