最低所得制度の導入を検討するフィンランド

13.12.2015

Photo: IFWEA


 フィンランド社会保険機構の「統一最低所得」又は「ベーシックインカム」制度の導入案が政府内で検討されている。生活保護、失業手当、基礎年金、児童手当、障害者保証などの現給付制度を廃止し、すべての成人国民に無条件で一律に決められた最低所得を給付する制度である。

 


月額800ユーロの支給

 現在提案されている「統一最低所得」給付制度では、成人1人に月額800ユーロ(約106,272円)が支給される。支給額以上の収入を望む人は、仕事をし、望まない人は仕事をしないという選択ができると政府はその利点を強調している。月額は失業手当の約600ユーロより高い額となった。


 「統一最低所得」制度は現給付制度より運営コストを大きく削減でき、公務員の縮小にも繋がることから政府は積極的に導入を検討している。国民も世論調査によると70%は導入に賛成している。制度の導入は早くて、2017年後半とみられている。

 


試験的に導入

 「統一最低所得」制度の導入は試験的にフィンランドの一部の地域で導入される。試験期間は20172019年の2年間で、月額550ユーロと社会保証の一部支給でスタートするとみられる。個人だけではなく、地域に与える影響が調査される。

 


財政事情で導入に疑問

 フィンランドは2012年以降、景気は悪化、経済を支えてきたパルプ製紙産業の低迷とノキアが世界携帯電話市場で優位性を失ってからのハイテック産業の低迷で成長産業がないことから、「統一最低所得」制度の導入と維持は難しいと思われる。月額800ユーロを支給するとなれば、コストは522億ユーロとなる。政府の2016年の税収はそれより低い491億ユーロと予想されているため、現実的導入することは困難である。



スイスは国民投票で問う

 スイスは2016年に「統一最低所得」の導入に関しての国民投票が実施される。だが、政府は国民1人当たりに月額2,500ドルを支給する案に悲観的である。導入コストは年間2100億ドル、スイスGDPの約30%に匹敵すると予想される。そのため、政府と議会は国民に導入に反対するよう、進めているなか、最近の世論調査では国民の49%が支持している。

 

  最低所得制度の導入の議論が欧州全体に広がりをみせている。