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2015年11月に国連安全保障会議の決議を無視してイランが中距離弾道ミサイルの発射実験を行ったことがわかった。核弾頭を積載可能な射程1,800-2,000kmのChadr-110型ミサイルの発射実験はパキスタン国境に近いChabaharという港町の近くで行われた。
Chadr-110はShahab 3の改良型でイランが10月に行った精密誘導ミサイルと似た仕様のもの。米国国連大使が強く非難するとともに国連安全保障会議も重大な決議違反としている。オバマ大統領も10月16日に核交渉の結果に影響を与えることはない、としながらもイランのミサイル開発にふれ国債制裁に持ち込む可能性を示唆した。
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核交渉と並行して国連決議2231によりイランは核兵器を搭載できるミサイル開発を凍結することになっていたが、イランは核交渉の成立後、中距離ミサイルの精密誘導化を進めた。国連安全保障会議は10月のイランのミサイル実験について決議違反の処置を検討中であったが、今回のミサイル実験で足元をすくわれることとなった。
イランが射程2,000kmの範囲の地域を精密誘導でミサイル攻撃を行える体制が整ったことになるが、2,000kmの範囲にはエジプト、サウジアラビア、ロシアとインドの一部が含まれることから、濃縮ウランの道が絶たれたいま(パキスタンルートで)核兵器を手に入れれば、これらの地域を核攻撃できることになり、中東全体への影響力が強まる。
イランの保有するミサイル体系は近距離から中距離までがカバーされることになったが、誘導ミサイルのほかにレーザー、レーダー、光学標準の対地ミサイルを積んだ爆撃機、潜水艦、艦船など近代兵器を備えた軍備は中東地域にとどまらず世界平和に脅威となりつつある。
イラン空軍は1979年の革命以前はアメリカから大量に戦闘機、ヘリコプターを輸入したが、革命後はソ連から兵器を輸入したため、アメリカとソ連製の武器が共存する珍しい軍隊となった。特にソ連製の対空ミサイルS-300が配備されている可能性はイスラエルの核抑止力に影響を与えている。イランの米国製軍備は革命後、弱体化してはいるが、Shahabミサイルはロシアと北朝鮮の技術で開発され進化してChadr-110に至る。2,000km以内への精密誘導ミサイル攻撃が可能となったイランが核兵器を搭載できないように封じ込めなければ、中東で核戦争が起きる恐れは十分あり得る。
イランが核ミサイルの発射スイッチを押すことに備えて、中東各国はイスラエルのように対ミサイル防衛網を検討しなければならなくなった。