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打ち上げロケットの垂直着陸による回収の試みで失敗続きのイーロンマスク率いるスペースX社を尻目に、アマゾン設立者のジェフ・ベゾスが100kmという低高度の宇宙旅行を商業ベースに乗せるために設立したブルー・オリジン社は目標とする100kmの弾道飛行と打ち上げロケットの垂直着陸に成功した。
ジェフ・ベゾスのFire phoneは見事なまでの失敗ビジネスであったが、こちらは弾道飛行という技術目標の設定が功を奏し、とりあえず当初の目標をクリアした。商業宇宙飛行では一般人を安全に宇宙空間に運ぶための宇宙船とそれを打ち上げるロケットの開発が技術課題であった。
ブルー・オリジンの商業宇宙飛行
宇宙船は低高度宇宙飛行用なのでこれまでのような大気圏突入時の耐熱対策がなされていないため、軽量に設計されている。打ち上げロケットも1段式で垂直着陸用の折りたたみ脚を除けば、単純な構造。安全性を考慮したといいつつも、回収でコストを下げるなど採算性をも重視している。
今回打ち上げられたのはブルーオリジン・ニューシェパードと呼ばれる宇宙船で打ち上げロケットが切り離されたあと、宇宙船は100kmの宇宙空間で弾道飛行を行ったのちに3つの大型のパラシュートで地上にもどる。今回の打ち上げ(2015年11月23日)では100.5kmに到達して宇宙船の回収及び打ち上げロケットの回収に成功した。
ロケット回収で採算性アップ
打ち上げロケットの燃料(液体水素)と酸化剤(液体酸素)は宇宙船を切り離すまでに使い切らず、いったん停止してから再点火される。このときには推力を絞り逆噴射して垂直に降下し地面近くで浮かんだ状態となり、打ち上げ状態の向きで着陸する。
ポイントとなるのは姿勢制御と細かいメインロケットエンジンの推力制御。スペースX社の失敗はいずれも、燃料不足や制御不良で地面に激突している。ニューシェパードの逆噴射と姿勢制御がうまくいったことで、2019年以降の商用飛行に弾みがついた。
パートナー
またブルー・オリジン社は打ち上げロケットに用いる大型エンジンBE-4を開発中だが、これができると現在アトラスVロケットに用いられれているロシア製のロケットエンジンを置き換えられるとともに、DARPAが進める新型ロケット計画にも売り込めるという。携帯電話への参入は事実上失敗したベゾスであるが宇宙ビジネスでは手堅いところをみせている。
ベゾスのパートナーであるユナイテッドローッチアライアンスという会社は聞きなれないがロッキード・マーチン社とボーイング社が2005年に立ち上げた合弁事業。防衛予算削減で危機的状況にある2社が宇宙ビジネスを目指すベゾスと結びついた。