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ある特定の周期で地球をとてつもないスケールの力を持つ「何か」が襲うということはあり得るだろうか。それによってある種では絶滅するような力である。実際地球の歴史のなかで繁栄を誇った種が突然絶滅するような事実はある。もっともよく知られている例は、6千600万年前に地球上から姿を消した。
恐竜絶滅の理由を説明するもっとも知られている説は隕石説である。山ほどの大きさの隕石が膨大なエネルギーとともに地球に衝突したことによる影響である。その証拠としてユカタン半島に直径200kmに及ぶ衝突の痕跡がみつかっている。しかし地球上の大規模な5回の絶滅(Big Five)のひとつにすぎない。もっと頻繁に(隕石衝突の確率より高い頻度で)種が絶滅しているのだ。
2億5千200万年前に10分の1の種が絶滅したことがわかっている。5大絶滅の他にもそれより小規模の絶滅が記録されている。それゆえ絶滅現象を隕石衝突のように極端低い現象のせいにすることはできないとする新しい考え方が起こった。科学者らはこれまでに起きた地球上の生命に重大な影響が周期的に起きる可能性を調べている。
1980年代にシカゴ大学の研究チームは化石を調べて、2600万年周期の絶滅と考えられる証拠をみいだした。調査の結果、過去の5回の大絶滅は全てこの周期に一致するという。最近、別の研究チームが古代地層を調べて過去5億年にわたって3000万年周期の絶滅を引き起こす規模の災害が地球を襲ったことをみいだした。彼らによればこの周期的な地球を襲った変動は巨大な衝撃によりものでそのときに火山の爆発を伴ったと考えている。
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これまでこのような大きな衝撃を地球に与える可能性のある対象が想像できないため、この周期説は注目されなかったが、最近になって暗黒物質と物質の相互作用が考えられ始めた。宇宙の85%を占める暗黒物質の実験的解明は世界最大の大型加速器LHCで始まったばかりで、その情報は極めて限られている。
2014年にハーバード大学の物理学者が薄いデイスク状の暗黒物質がその巨大な引力で彗星の軌道を曲げ、太陽系の惑星に影響を与えるかについての研究を発表した。彗星は一定周期で地球などの惑星に接近することによって、地球に周期的なカタストロフイをもたらす可能性があるという。
Monthly Notices of the Royal Astronomical Societyに掲載されたこの説も仮説に過ぎないが周期的な衝撃を受けた事実に矛盾しない。もし暗黒物質のデイスクが一様でなく塊になっている部分があれば、地球を通過する際に地球全体がその衝撃を受けるが、同時に暗黒物質を形成する粒子が地球深部に吸い込まれて相互作用で消滅することになる。これによりコア温度が数100度高くなるため熱せられたマグマが、100万年スケールで地球表面に流れ出す火山の噴火、海水の高さの変化、気候変化がもたらされる。
この考えが正しければ将来も同様な衝撃が繰り返されることになり、遠い未来に再び地球を襲うことになるため、地球の地質学的な研究が宇宙の起源とその結果としての暗黒物質の影響という壮大なスケールで考える必要があることになったといえる。銀河に存在する暗黒物質が生命誕生と絶滅に影響することも真剣に考慮する必要があるが、暗黒物質の存在自体を調べるにはどうしたらよいのだろうか。
欧州版のNASAであるESAが2013年に打ち上げたGaia探査機がこの暗黒物質デイスクの大きさと太陽系を襲う正確な周期についての情報が得られるはずだ。これによって暗黒物質デイスクの周期が歴史的事実と一致すれば、周期的なカタストロフイが暗黒物質でもたらされる仮説の証明となる。しかし暗黒物質は銀河系内部からやってくるわけではない。
最近の研究で銀河系の外にある一番近い星団、アンドロメダにも暗黒物質があるとする結果が得られている。ただし暗黒物質が弱い相互作用でエネルギーを失いデイスク状になるのは非常に特殊な場合に限られるらしい。またデイスクが一様でなく塊がないと惑星への影響も説明できないとされる。より多くの根拠はGaiaからもたらされるはずである。結論を出すのはそれまで持ち越しになる。