深刻化する北米の環境汚染ー天然ガス漏れ

30.12.2015

Source: NASA Science

 

米国の天然メタンガス漏れが環境と健康に被害を及ぼすほど深刻化している。4つの州(アリゾナ、コロラド、ニューメキシコ、ユタ)が共有するFour Cornersと呼ばれる地域では2003年からの天然ガス(メタン)の地上への放出量が年間59万トンに達している。

 

Four Cornersの天然ガス放出は世界最大である。このほど漏れの起こっている場所を特定する調査にNASAが加わった。欧州宇宙局の衛星データをミシガン大学とNASAの研究チームが解析し、このホットスポットの放出する天然ガスが北米で最大の温室効果ガス排出となっていることを突き止めた(上図)。

 

 

北米の異常気象にも影響

研究者によると北米の異常気象と深く関わっているとされる北太平洋の「ブロブ」と呼ばれる暖水塊がメタンガスの放出を介して海洋生物の大量死にも関係しているという。北米では西海岸が暖かく乾燥する一方で、東海岸が寒冷化し豪雪に見舞われるという異常が続いている。ワシントン大学の研究論文によれば通常より1-4度高温の北太平洋沖の暖水塊の長寿命化が異常気象をもたらすとしている。

 

温室効果ガス排出量の規制が一段と厳しくなる中で先進国の排出量には手がつけられていないのが現状である(下図)。天然ガス供給過程では1%未満の漏れが起きるが、今回のような巨大な大気放出は周辺地域のみならず地球全体に影響を与える。

 

 

Source: Wiki

 

 

南カリフォルニアのガス漏れ

Four Cornersとは別に新たな天然ガス漏れが生じている。10月23日の南カリフォルニアの貯蔵施設のメタンガス漏れで健康被害をもたらす危険性があるため住民が避難する騒ぎとなった。ロサンゼルス中心から北西40kmのPorter Ranchにあるガス貯蔵施設の掘削作業の失敗によるとみられる。現在までの2カ月間のガス漏れ量は毎時49.9トンに及ぶ。ロサンゼルス市中心部の放射性廃棄物処理場の放射能汚染の記憶に新しいが、今回のガス漏れによる環境汚染も深刻化している。

 

 

Source: la.curved.com

 

メタンガスの温室効果はCO2の80倍 

温室効果ガス規制の観点からメタンガスの環境に放出量は厳しく規制されている。その温室効果が(放出後20年間にわたって)CO2の80倍となるためである。南カリフォルニアの天然ガス漏れによる温室効果は700万台の車の排出量と同じで、吸い込んだ住民は呼吸困難や頭痛などの健康被害を訴えている。

 

北米の異常気象、北太平洋の生態系への影響にとどまらない天然ガス漏れにCOP21後の米国は手をつけざるを得ない。シェールオイル掘削による環境汚染も含めて、これから解決すべき問題が山積みであるが、その背景に利益を追求して無謀な掘削を強行した巨大企業がある。