消えつつあるアメリカの起業家精神

Jan. 21, 2015


  アメリカの経済成長を支えてきた起業家精神は誰もが認めるところである。世界で最も新規の会社設立数が多い国であった。しかし、今では会社設立より、会社の廃業の方が大幅に増え、「アメリカン・ドリーム」を求める起業家精神が消えつつあるといえる。


 世界一起業家が多い国であったアメリカは、年間新規の会社設立件数においては、ついに現在世界12位まで転落した。驚くべきことにハンガリー、デンマーク、フィンランド、ニュージランド、スェーデン、イスラエル、イタリアよりランキングが低い国となったのである。


 新規の会社設立件数が年間約22万件であった1977年をピークに、下降傾向に向かっていたが、それでも設立会社の方が年間10万件廃業する会社件数を上回り起業家精神は続いていた。だが、2008年のリーマンショック以降、新規の会社設立件数と会社廃業件数が逆転した。


 会社の死亡率が出生率を上回ったのである。しかも、この傾向はさらに悪化している。年間40万件の会社が新規設立したのに対し、47万の会社が廃業している。会社廃業件数は新規の会社設立件数より7万件も多いのが現状である。



 

 

 日本でも政府、大学、企業などが起業家精神の育成に積極的に取組んだのが1980~90年代であった。だが、起業家を育てる環境の整っていたアメリカ文化に対し、日本では起業家を育てる文化はなく、必要な環境(特に融資)を十分整備できず、アメリカのように際立った起業家を輩出することはできなかった。


 そのアメリカで起業化が難しくなっている理由には、資金調達の問題、増える商業規制、そうしてアメリカの将来に対する絶望感により起業化を諦める若者が増えたことがある。

 

 会社の新規設立は経済の活力のバロメーターであり、雇用の創出、新しい産業や技術の創出に貢献する。起業家精神が消え去ろうとしているアメリカは、これからどこに向かって行くのか予想がつかない。子供の頃から学ばされる「働けばお金になる、アイデア次第で稼げる」という資本主義を支える精神が弱体化した結果なのだろうか。

 

 豊かな時代のアメリカにあっても子供達は、小さい頃からレモネードやクッキーを売ってお金を自分で稼ぐことの大切さとそのスキルを教え込まれる。お金の意味、重要性を幼いうちから学ぶ。