明暗を分けたA380の選択

Jan. 31, 2015









 

 JALもANAも手をださない最新鋭の2階建てエアバスA3806機の購入費用が総額1915億円となり、経営破綻したスカイマークの命取りになったとされる。メデイアにはこの暴挙で経営危機に陥ったとする記事が多い。確かに高額な発注があだとなったことは事実だが、筆者はA380の選択については別の意見を持っている。A380は世界最大のワイドボデイ機であある。ルフトハンザが早々と成田−フランクフルト間に就航させて以来、同機を導入したエアライン各社は相ついでそれぞれのエアラインのドル箱路線に投入した。


   ルフトハンザ    フランクフルト−ニューヨーク

   シンガポール航空  シンガポール-ロンドン

   エールフランス   パリ−ニューヨーク

   BA         ロンドン−ロサンゼルス

   大韓航空      ソウル−ロサンゼルス

   エミレーツ     ドバイ-ロンドン

   カンタス航空    シドニー-ロンドン

   タイ国際航空    バンコク−シンガポール


 気がつくのはどのエアラインも拠点(ハブ)から旅客数の多い主要都市への看板路線に導入していることである。一機あたりの購入コストが大きいとはいえアシアナ航空もソウル−ロサンゼルス路線に投入している。JALもANAも主力機はBoeing機であり、エアバスからフラッグシップとなる超大型機を購入するには障害があったことは理解できる。



フラッグシップとして文句の無い存在感

 しかし各国の玄関口を結ぶ路線においてA380の存在感は圧倒的であり、一度乗ればかつてBoeing747で体験した安定性とそれまでにない室内空間の余裕は双発機では体験することができない。6機もの購入を安易に決めたスカイマークCEOは致命的なミスを犯したことは確かだが、国際線にA380を就航させること自身は間違いではなかったはずだ。自社で機体を所有しないスカイマークだからこそ、A380リースで経験と実績を積んでからでも良かったはずだ。


 世界的にみるとA380を購入するエアラインはキャビンの総面積はB747-400の約1.5倍という余裕で、ラウンジなど特別なサービスで人気を得ている。特にエミレーツ航空は石油マネーにものをいわせて140機の大量発注をしている。現在のところA380購入のピークは過ぎ、382機のオーダーでは採算性が悪く、このままでは生産終了となる恐れもでてきた。


国際線における4発機の意味

 運用の採算性に目を向ければハブ&スポークが小回りのきくBoeing機に押し切られたようにもみえるが、4発の安全性とロールスロイス社のTrentエンジンの信頼紙と、圧倒的なキャビン、離発着時の安定性については、看板路線にふさわしいといえる。双発機の信頼性は高いとされるがやはり国際線は4発がふさわしい。現在、ワイドボデイ機で4発はエアバスのA380、A340とBoeing747-ダッシュ8だけでとなったが、個人的には4発に乗りたい。


 スカイマークがJALとANAの間のスペースを見つけるのは難しいが、アメリカのエアラインが目を付けた羽田発着権を行使して、リース機でもA380を就航させたらまた違った展開であったかも知れない。空のTPPともいえるオープンスカイの対米2国間交渉が決着しないのは、羽田離発着の利便性にある。喉から手が出るほど価値のある羽田離発着権を持つのはスカイマークである。



 スカイマークが羽田−ロサンゼルスにA380を飛ばせたら、と思うと残念でならない。スカイマークのワンマン体制に問題があっただけで、羽田利発着の利便性と組み合わせればA380の選択肢は圧倒的な強みであったはずだ。将来国内のエアラインがA380を飛ばすことはなくなった。たったひとつのチャンスをCEOが潰してしまったことが残念である。