海外に移住する中国人が近年急増している。国連が発表した「2013年世界移民報告」によると、2013年には930万人の中国人が海外に移住しており、世界で4番目に多い移民輸出国である。多くは、中国富裕層で、移民先は一番人気のアメリカに次いてカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの順である。
海外に移住する理由として、子供に良い教育を与えるため、財産(特に政権幹部による汚職で得た財産)を保全するため、政治上の将来不安、安定、安心な生活を望む、環境汚染、などが挙げられている。アメリカ、カナダ、オーストラリアなどにおける移住権取得を容易にする移民政策が移住の増加の後押しとなっている。
EB-5投資永住権プログラム
アメリカでは、移住権の取得には従来のグリーンカードの申請とは別にEB-5プログラムを申請する。これは米国移民法による政府公認プログラムで、条件を満たせば永住権を取得、アメリカ人と同様の生活、教育、基本権利を受けることができる。この申請書類の言語に英語と中国語があることから、中国人の申請が多いこと、中国人を積極的に受け入れる方針であることがよくわかる。
ではEB-5投資移住権プログラムとはどのようなものか。下記の条件に該当すれば、永住権を取得することができる。
1. 100万ドル以上を投資して過去2年以内で10名の米国人の雇用を創出した。
2. 失業率が米国平均失業率の150%を超える地域に50万ドル以上を投資して、過去2年以内に10名の米国人の雇用を創出した。
3. 米移民局が指定した地域センターの新しい事業あるいは経営困難にある事業に50万ドル以上の投資資金を投入、間接的に雇用を創出した。事業から収益を得ても良いとされる。
EB-5プログラムは、アメリカ経済の復興と雇用促進のために創設されたもので、アメリカに必要な資金を呼び込むために移民法を活用したものである。1991年に法案となったが、リーマンショック以降、アメリカ政府は積極的にEB-5プログムを推し進めてきた。2012年にプログラムが終了となるはずであったが、2015年9月30日までの延期がオバマ政権によって確定された。
2014年の会計年度(2013年10月1日から2014年9月30日)には、EB-5の申請は10,928件で、うち85%は中国人で占めた。2013年から72%増、10年前と比べると驚くべき22倍である。最早、アメリカ経済は中国富裕層によって支えられていると言っても過言ではない。