サウジアラビアのアブドラ国王(91)が年末に首都リアドの病院に入院した。高齢であるため健康状態はここ数年注目されていたので、驚くべきニュースではないにも関わらず、サウジアラビアのタダウル株式市場は31日に6.5%と大きく下落した。
アブドラ国王の後継者はサルマン皇太子(79)と確定されていることから、王位継承に関しては問題がないとされる。だが、新国王によるサウジアラビアの今後の石油価格に関しての方針と、政策の方向性が不透明であることが、株式下落の不安を招いた。政策転換によっては、OPECの役割と原油価格のトレンドが大きく変わる、いわば「ゲームチェンジャー」になる可能性さえある。
OPEC加盟国対非加盟国の対立構造
サウジアラビアは、今回の原油価格の下落をOPEC非加盟国の非協力的な態度と行動、特にアメリカのシェールオイルとロシアの増産政策が原因としている。11月のOPEC総会後も数回にわたり、サウジアラビア自身は減産せず非加盟国の減産を呼びかけた。非加盟国減産を見送ったことから価格はさらに急落した。
OPECの加盟国は現在12カ国(注)で世界の原油生産の40%を占める。定期的に総会を開催、加盟国全体の原油生産量の上限を決めて生産調整を取り、価格の安定を図ってきた。サウジアラビアは OPECの中で最も高い生産量を占め、実質的に原油価格を決定してきた。
今回の価格下落を容認している背景には、生産効率性の低い、つまり競争力の低い非OPEC生産国、特にロシアを市場から締め出し、サウジアラビアの市場シェアを守ろうとする国家政策がある。そのためには、原油価格が1バレル20ドルまで下落することも視野に入れていることを、年末のサウジアラビア石油鉱物資相の発言で示唆している。
原油価格により財政赤字化
サウジアラビアの経済は過度に石油輸出に依存している。財政歳入の90%は石油輸出が占めている。原油価格が6月以降半減していることから、2014年は財政赤字となる可能性がある。2015年予算も1バレル80ドルという原油価格をもとに策定した可能性があり、記録的な赤字を出すことは避けられない状況である。
今でも、サウジアラビアでは、王族と市民の間の格差に対し不満があるため、財政赤字化とより効率化を進める石油生産者により、国民感情が「サウジの春」を引き起こす可能性が高まっている。
アブドラ国王の健康状態と後継者となるサルマン皇太子がOPEC主導から需給で決まる原油価格の時代に変わりつつあることを認め、原油政策の見直しを行うかによって、今後の原油価格の動向は大きくかわる。政策転回の引き金となるのが、サウジアラビアの民衆かもしれない。
2015年 さらなる原油価格の下落
最新の原油価格を下記に示す。移り変わりが激しいので注意が必要。
WTI 52.03 ドル/バレル(2009年以来の最安値)
Brent 55.65
(注)アルジェリア、アンゴラ、エクアドル、イラン、イラク、クウェート、リビア、ナイジェリア、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ベネズエラ