昨年にIMAXシアターで公開された日本でのタイトル「ゼログラビテイ(オリジナルはGRAVITY)」は宇宙ステーションで作業中の米国宇宙飛行士が、宇宙ゴミの衝突で危機となるが、他国のロケットに乗り換えて地球に生還する、というストーリーであった。
映画「スピード」で思い切りのよい運転をみせたサンドラブロックが、パニックのあまり宇宙船を壊しまくる不自然さが印象的だった。この映画は、中国で数カ月早く公開された。映画をみて理由がわかった。米国の宇宙飛行士を救ったのは中国のロケットであった。中国市場に媚を売る米国の映画ならではだが、このロケットは映画の中では無人であった。俳優を登場させてまでサービスしたくはなかったらしい。
韓国政府「未来創造科学部」は、宇宙破片が2015年1月4日午後9時30分(日本時間)ごろ、韓国の「科学技術衛星3号」の軌道に23mまで近接すると発表した。場所は、グリーンランド海の上空で、衝突の危険性があるのは2009年2月に米国の衛星とロシアの衛星が衝突した時の20cmほどの破片。
1万数千ともいわれる10cm以上の宇宙ゴミは衛星同士の衝突破片や自然に速度が落ちて大気圏で燃え尽きた衛星の一部よりも、軍事的に衛星を破壊した時の破片の方が多いという。国際宇宙ステーションが本格稼働してから、宇宙飛行士の平均宇宙滞在時間は極端に長くなると、衝突の確率が無視できなくなって来た。
宇宙ゴミの捜索は米、ロシア、日本をはじめ各国が積極的に取り組んでいる。上の写真はロシアのミール宇宙ステーション。旧式化したため自国の宇宙船で大気圏に突入させた。GPミを発生させずクリーニングに成功した例である。宇宙ゴミの衝突時の速度は数km〜10km/秒という超高速なので、小片であっても宇宙ステーションに致命的なダメージを与える。そのため各国がゴミ処理について協議している。強制的に軌道を変えて大気圏に突入させて燃やすか、デブリを何らかの手段で回収する方法がある。
日本宇宙航空開発研究機構(JAXA)は後者を選択、地球軌道上のデブリをロボット衛星で捕獲し、地球に再突入させて除去する技術を開発している。ユニークなのは漁網メーカー「日東製網」が 共同開発中の「宇宙ゴミ除去システム」で、漁網で魚を捕ることを宇宙ゴミに適用する意欲的な計画である。実行するには「宇宙ビジネス」に委託することになるだろう。実際に宇宙ゴミ処理を専門とするベンチャー(注)も生まれている。実用化に向けて開発のピッチは加速されると期待されている。
(注)アストロスケール社、CEOは岡田光信氏。
地球を周回する宇宙ゴミ。