超低コスト火星探査機

Jan. 2, 2014

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 米国NASAのオリオン宇宙船については記事をかいたが、究極的な目的は有人による火星探査である。また無人探査のために、NASAは火星探査機MAVEN(Mars Atmosphere and Volatile EvolutioN)を打ち上げ、2014年9月に火星に到達した。


 MAVENは約1年かかって火星軌道にのり、主に火星大気と電離層の調査を目的としているが、これは有人探査に欠かせない大気成分メタンや着陸後の放射線強度を左右する電離層の詳細情報である。


 MAVENに搭載される計測機器は太陽風(電子、イオン)分析、大気、電離層、磁場の多岐に渡り、計測器開発は独立した研究機関で行われるため、全体の予算が膨らみ6億7100万ドル(約732億円)に達した。多くの研究機関が関与する宇宙開発では潤沢な予算になりがちであるが、これに一石を投じたのがインドの火星探査機Mangalyaanである。その打ち上げコストは米国のMAVENの約10分の1となる7400万ドル(約80億円)であったからである。


 

 何故、超低予算の火星探査機が可能となったかはMAVENが米国流のRedundancyを考慮して、ひとつの項目に対して複数の機器を装備していて、しかも対象項目が多数であったため、結果的に重量が増えたこと、またそれらを開発する費用が多額の開発費を必要としたためである。


 一方、Mangalyaanは火星大気の注目成分、メタンの分析が主な目的でその他の計測機器を省いたため軽量化による打ち上げコストの削減と開発費と開発期間の圧縮に成功したのである。


 

 LCCの特徴は低価格で搭乗できることだが、一方では過剰ともとれる機内サービスを「捨てる」精神が重要だ。インドの火星探査機Mangalyaanで有人火星飛行に必要な情報が全て集まるわけではないが、昨今話題になることが多い火星移住、火星の生命、さらに生命の起源の探求において最も重要なメタンにスポットライトをあてて、その探査に絞り込んだことは勇断であった。「切り捨ての美学」である。