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Dysonの掃除機はサイクロンという新しい潮流を掃除機の世界にもたらし閉塞感のあった家電市場に、ファンレス送風機やエアークリーナーなど次々と、革新的な製品を送り出した。息子のJake Dyson が開発したLEDライトは期待通り魅力的な製品となった。
Dysonの掃除機はターボポンプのような高速回転のサイクロンメカニズムに魅了されるだろう。またファンレス送風機の静粛性やスムースな風に心地よさを感じざるを得ない。ここまで来ると値段はさておき技術やなら誰でも脱帽である。
Dyson社のCEOであるJames Dysonが日本から得られる特許のサイクロン技術のライセンス料で会社を起こしたのは有名な話だが、息子のJake Dysonはすでに完成されたと思われているLEDの細部に渡って、調査し欠点をみいだしそれを技術で克服して自分の会社Jake Dyson Lightで製品化した。
Jakeの会社、Jake Dyson Lightはロンドンの一角にあるヴィクトリア建築様式の古いレンガつくりのビルを買い取ってデザインルーム、ワークショップなどを機能的に配置した工房である。
LEDの弱点とは何か。LEDは電球のように発熱発光体ではない電子デバイスであるために、コントローラー回路が根元にある。長時間使用した後でこの部分を触ってみると驚くほど高熱になっている。エネルギー消費が少ないとはいっても発熱がないわけではない。
そのため電球には放熱のためのフィンが取り付けられている。Jakeはしかし放熱が十分でないことに気がついた。LED素子自身は電子デバイスであり一定の歩留まりがある。LED電球製品では(選別されるので)数万時間の寿命が保証され電球の数倍長いとされる。(注1)
しかし厳密には放熱がよければ寿命が落ちる。放熱性が悪ければ光束は低下し寿命は短くなる。例えば230Cと185Cで比較すると高温では1/30に寿命が低下する(http://www.led.or.jp/led/led_life.htm)。
(注1)寿命は40,000時間近辺になるので実際に点灯試験を行っているわけではない。統計的な温度依存条件データの解析で算出している。
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Jakeはここに目をつけた。放熱性を上げるにはどうしたらよいか。放熱フインに微細加工して表面積を増大させるか、ヒートパイプで熱伝導性を高めるなどのアイデアが技術者の頭に浮かぶだろう。
ヒートパイプ(注2)を使ってLED周辺を冷却するアイデアは直線的な可動アームのデザインとマッチした斬新なアイデアだった。これによって37年という長寿命LEDの斬新なデスクライトが誕生する。
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(注2)
熱伝導の良い金属パイプの中に上の図のように揮発性の液体を封入した二重構造になっている。一方の端が加熱されると閉じ込められた液体が蒸発し潜熱の吸収が起こる。蒸発した気体は反対側に移動し凝縮が起こると潜熱の放出が起きる。
このサイクルで外からみれば加熱された端の熱は高速に反対側に移動する、つまり熱の移動が起こるようにみえる。この技術が高性能CPUの冷夏客に欠かせない技術だが、現代では幅広い冷却方法として広範囲に応用されている。
JakeによればLED電球を買っても6カ月後に光量が30%も減る場合があり、これは放熱対策が十分なされていないことによるということだ。当面はデスクライトCSYSと室内照明Arielを販売する。後者では温度を55Cに低下させて光量の変動を抑え寿命を37年にも伸ばしている。
ArielはWiFi対応でスマホアプリで制御できる。Dyson流のLED再考は熱対策で高品質なLED照明を提供するものである。CSYSはテーブルトップ型、机取り付け型とも69,120円。掃除機同様に高級照明機器の価格となる。