アフリカ東部のジブチ共和国はフランス、ドイツ、米国、日本の軍事拠点となっている。「アフリカの角」とも呼ばれる地域(エリトリア、ジブチ、ソマリア)に位置しており、紅海とアラビア海を結ぶ海峡で、インド洋への出口となっている石油供給路チョーク・ポイントであるバブ・エル・マンデブ海峡(下の写真)に面している。今このジブチ共和国に中国が軍事基地建設に動いている。
ジブチ共和国
砂漠と火山が90%の国土面積を占めるジブチ共和国は、人口820,000人の資源のない国であるが、イエメンのアデン港の西、バブ・エル・マンデブ海峡に面していることからアフリカ諸国の中でも地政学上、戦略的に重要な国である。1977年独立するまでは、フランスの植民地支配下にあった。隣国のソマリアとは違い、安全で安定した政権下にあり政治的リスクが低いとのことから、フランス、ドイツ、米国、日本は軍事基地拠点を保有している。
バブ・エル・マンデブ海峡のチョーク・ポイントは1日に370万バレルの石油が通過する。その量はマラッカ海峡を通過してアジアへと運ばれる石油の1/4である。
各国の軍事基地
ジブチの独立後、フランスはバブ・エル・マンデブ海峡の安全確保のために安保協定下で複数の軍事基地をつくった。米国は911後、テロとの戦いの一環として、ドイツは地域の安全、テロと多発する海賊対策として、軍事活動を行う目的で軍事基地を設置。米国のレモニエ基地(トップ写真)は、今では中東とアフリカ地域における米国の特殊部隊とドローン活動の作戦拠点となっている。
日本も海賊対策として、自衛隊をソマリアに派遣、その後ジブチに自衛隊の海外基地をつくった。現在、陸海空の自衛隊員600人がジブチ基地に滞在している。だが、海賊事件はほとんどないことから、今後ジブチ基地が、自衛隊の中東とアフリカ地域での自衛隊活動拠点となる可能性が高い。
各国は経済的援助を行っているが、軍事基地用の用地使用費として年間2,000万から4,000万ドルを支払っている。これが国の大きな収入源となっている。加えて、多くの国の護衛艦の整備と燃料再供給の拠点であることから、港湾施設使用料も収入源である。そのため、ジブチ政府は特定の国を優先するのではなく、均衡者外交政策をとってきた。
中国の軍事基地建設
中国が最近になって軍事基地の設置に乗り出した。アフリカ諸国と中国の貿易は、EUや米国間との貿易より遥かに大きい。最早、アフリカと中国との関係は経済的に強い依存関係にある。貿易以外にも、民間投資は米国より上回る。国家ぐるみで猛烈なアフリカ進出を行ってきた。
ジブチの場合は天然資源の確保ではなく、その戦略的な立地位置の重要性にある。中国はジブチの港湾、空港、鉄道などの大規模インフラプロジェクトに投資してきた。その次の段階として、西側諸国と同様に軍事基地を持とうとしていた。
ジブチと中国両政府は5月になって軍事協定を結んだ。中国海軍はジブチ港を利用できるようになり、計画していたジブチ北部のオボックに軍事基地を建設することができることになる。軍事基地は西側、特に米国を牽制する以外に、中国の軍事大国としての国際的プレゼンスの拡大を意味する重要な動きである。
同盟各国の軍事基地で勢力を保っていた米国にとって、中国の軍事基地の建設は脅威である。米国はジブチ政府との軍事協定を10年延長し、中国に対抗して既存の基地の拡張を決めている。
今後、この小さな国に注目することで、中東とアフリカにおける米中の2つの大国の動きがみえてくるであろう。下の写真は太平洋に進出する中国海軍の艦船とヘリ。