財政難に苦しむ国のなかにはインターネットに課税する動きさえみえて来たが、「情報の爆発」(注1)を支えるインターネットの「処理能力」に限界が見えて来た。「情報の爆発」で容量が限界に達しそうなのである。
(注1)「情報の爆発」
"Information Explosion"とは1964年にニューヨークタイムスの記事で初めて使われたとされる。現代を象徴する指数関数的に増大する情報量は人間の処理能力を上回り、情報の記録、整理が追いつかなくなる、というものであった。インターネットの無い時代のこの言葉は後のインターネットの発展とその破綻を予知したかのようである。
インターネットには国境が(一般的には)ない。そのため平等に情報に接することができているが、一人一人が扱う情報量が(ストレージや処理能力、何より接続速度の飛躍的な向上によって)テキストからイメージへ、そして動画へと増大の一途をたどりつつある。異常ともいえる発展の延長に何が待っているのだろうか。
「ムーアの法則」の創始者、Gordon Mooreがいう"No exponential law is forever"という自然の摂理がここでも成立するようだ。この危機を"Web Crisis"と呼び、情報関連の技術者がロンドンの科学アカデミーに集められ、近未来のインターネットの危機について議論が行なわれた。ちなみに「ムーアの法則」の破綻は2017年とみられる。
単純に現在のインターネット使用量の増大が続けば20年後にその電力使用量は英国全体の電力使用量に匹敵する。電力だけではない。スマートフォンやタブレットの増大とPCの能力向上で扱うデータ容量がインターネットの能力(注2)を8年後に上回る。
(注2)
インターネットを支えているのは海底に敷設された光と銅線のケーブル網だ。サーバー間を直線で結ぶイメージだが、実際には飛行ルートのように大陸間を幹線が結んでいて、その幹線の能力を超えるとウエブ接続ができなくなる。
ここまで危機的状況が現実のネットダウンに至らなかったのは、情報通信の急激な増大を見越して、インターネット回線速度が10年で50倍になったからである。2005年にブロードバンド回線速度は2Mbpsであったものが、現在は100Mbpsになった。光回線で1,000Mbps接続を行なう一般ユーザーもいる。
ネット需要が限界を迎えたときには接続料金やウエブ課金でアクセスに制限をかけなければならない。光ファイバーの数を増やすと莫大な敷設費用は回線料金に上乗せされる。これらの事情はGoogleの成層圏気球による"Project Lagoon"の利用対象(インターネット幹線からはずれた開発途上国)を考え直すべきかも知れない。
Project Loonは成層圏に浮上する太陽電池パネルで電力を得る「通信気球」が周囲の直径40km地域からの衛星アクセスでのインターネット接続を可能にする。
このアイデアは衛星電話システム「イジリジウム」に近い。イリジウム計画(上の図)は地球上に打ち上げた66個の衛星で世界中から衛星電話をかけられるシステムだが、同様なインターネット衛星を計画する日も遠くないかも知れない。下はProject
Loonについての説明。