ラスベガスから水が消える日

May 5, 2015

 アメリカ中西部、特にカリフォルニアを襲う干ばつの危機的状況を伝えたばかりだが、カリフォルニアだけではなかった。今度はラスベガスが危ない。視野を広げれば、地球上の水資源に赤信号が灯っているのだ。


 アメリカに話を限れば50州のうち実に36州が水不足になる恐れがでて来た。アメリカへの合法的な移民はメキシコのみに限っても年間100万人を越える。移民の増大で人口は100年間に倍増した。


 一昔前は2億の人口がいまや3億を越えても増加が止まらない。水資源の不足する中西部の人口増加は20%-50%に達した。人口増加に対応する水資源開発が進んでいないことで、ある程度は予測されていたが、異常気象で水不足が深刻になっている。


 ラスベガスの水は南東24マイルに位置する人工のミード湖(写真と地図参照)に頼っている。ミード湖には有名なフーバーダム(注1)があり、水力発電で電力をラスベガス(ネバダ州)、アリゾナ州、カリフォルニア州に供給している。


(注1)大恐慌を受けて雇用創出のためにルーズベルト大統領がニューデイール政策で1931年に着工、1947年に完成時の大統領の名前をとってフーバーダムと呼ばれた。貯水量400億トンを誇った。ミード湖の貯水量はコロラド川に流れ込む雪どけ水だが、近年は積雪が少ないため顕著となっている。カリフォルニア州では知事が節水のための法的措置を発表したばかりだが、ネバダ州東京は2015年は25%の節水を予定している。ミード湖の枯渇はまず水道が止まることを意味するが、それだけではない。電力も供給できなくなる。


 

 ミード湖はコロラド川をフーバーダムがせき止めてできた美しい人口の湖で筆者が訪れた1980年時には、高齢の富裕層のクルーザーがぎっしりと接岸し、魚釣りを楽しむ人で賑わっていたが、水は豊富で枯渇することは到底考えられなかった。

 

 しかし上の写真の比較で明らかなように2007年時点で慢性的な水量低下に苦しむこととなった。ラスベガスはもともと小川のほとりにあったという。いまでは小川は干上がってしまったが、そのかわり隣にあるミード湖の豊富な水資源でオアシスのように発展した。最近になって水不足が急速に深刻化している。

 

 水不足の原因は地球温暖化とする研究者もいるが、根底にあるのはネバダ州南部の開発である。急激なネバダ開発により需要がコロラド川の貯水池であるミード湖の供給能力を超えたということである。

 



 ネバダ南部の水道局はミード湖(コロラド川)に水源を頼る時代は過去のもので、ラスベガスに地下水を集めてパイプラインで水を引く必要があるとしている。貯水池では不足するため地下水に目をつけたのだが、地下水をくみ上げると東部の牧畜に影響がでるとして反対派もいる。

 

 ラスベガスと周辺地域は90%をミード湖に依存している。ミード湖の貯水量は80年間で最低となった。しかし問題は供給量だけではなく水質劣化もネバダ州南部の環境保護地区の動物生態を脅かすものとなっている。ネバダ州の開発(上)に伴う環境破壊は、避けられない世界共通の問題であるようだ。