難民の感染症に悩む欧州

24.01.2016

Photo: ibtimes

 

欧州に流入した避難民が持ち込む感染症リスクについてかいた矢先に現実になった。週末にかけてノルウエーの沿岸警備隊は906名のアフリカからイタリアに移動中の難民を保護した。当局は6名がマラリア感染者の恐れがあり300名がダニの一種である疥癬を持っている疑いがあるとしている。

 

これだけではない。5月に同じイタリアの街、Reggio di Calabriaにたどり着いた1名がマラリアに感染し、50名が疥癬の宿主であった。8月には避難民の船からエリトリア国籍に感染症で死亡した難民の死体が見つかっている。

 

CDCの欧州版であるECDCの2014年5月の報告書によれば、欧州に避難した難民のエイズと肺結核の感染率が際立っているとしてる。また欧州で発生するマラリアの99%が難民の感染だったという。

 

現在の感染症封じ込め対策は十分でなく強制力もないため避難民とともに感染症ウイルスが持ち込まれるリスクが高い。感染症を発見し閉じ込め、治療を行う必要が高まっている。

 

Reggio di Calabria当局はアフリカと中東から押し寄せる難民の衛生管理に努力しているところだがこれだけでは十分でないことは明らかだ。欧州が避難民で溢れかえる事態になれば、検疫制度と感染者の隔離体制が難民受け入れに際して必要になる。現時点では難民の居住区からパンデミックが発生した事実はないが受け入れに際して手段が講じられなければそうした事態が起こるのは時間の問題だ。

 

 

Source: Indian Strategic Studies

 

1998年を最後に国内に20年間感染者がいなかったジフテリアがリビア難民にみつかったためデンマーク当局は病院にジフテリアを警戒するよう通告した。また肺結核やマラリアのウイルスを持つ難民がいるとして、デンマーク政府は難民の感染症検査を義務づけることを検討している。

 

デンマーク当局は難民によって感染症が持ち込まれないための封じ込め対策が必要だとしている。厚生大臣のSophie Lunde氏は移民局が厚生省当局と検討に入っていることを認めた。

 

2014年にロンドンの肺結核患者は2,500名となり、難民によって肺結核がイラク、ルワンダ、アルジェリアを含む他の国の総数を抜き最も感染者が多い都市となった。難民の感染は英国に到着してから5年以内のケースが多いが出身国の感染率を反映しているという(オックスフォード大学移民調査室調べ)。ロンドンで発祥した肺結核の80%は難民によることも報告されている。

 

ロンドンの肺結核率は2014年までの3年間低かったが難民の流入で肺結核の多い都市のレッテルを貼られることになった。欧州に分散した100万を超える難民の検疫体制には各国の協力体制と予算が必要になる。難民にとっても感染症リスクが高まることは不幸であるが平和に暮らしてきた欧州住民にとっては寝耳に水のことである。「難民を受け入れる」ことの重さを認識させられる。