NY連銀から1億ドルを盗みだしたハッカー

11.03.2016

Photo: Discomusic

 

 ニューヨーク連銀のバングラデシュ政府口座から10億ドル(約1,140億円)の資金が流出の危険にあった。口座は不正にアクセスされ、資金の一部はフィリピンのカジノでマネーロンダリングされた後、香港を含む複数の海外口座に送金された。残りの資金がスリランカのNGOに送金中に事件が発覚した。バングラデシュ中央銀行はニューヨーク連銀を告訴する考えを明らかにしており、前代未聞の中央銀行間の争いに発展している。

 

 ニューヨーク連銀には、外国の中央銀行や政府機関などの口座が250ほどある。各国は対外債務の返済や貿易の決済に備えて、保有する外貨準備を預けている。バングラデシュは外貨準備280億ドルを保有しており、その一部をニューヨーク連銀に預けている。その口座から、10億ドルの資金の送金依頼があったことが2月5日に判明した。

 

 

資金は2つのルートで送金

 資金の一部である8千万ドルは4回に分けてフィリピンにある3つのカジノの口座に送金された。振り込まれた米ドルはまず闇為替ブローカーを通して、現地のペソに交換、ある中国系フィリピン人の口座に振り込まれた。その人物は、ギャンブル好きな富裕層をフィリピンでギャンブルができるよう手配するのが職業であった。資金は少なくとも3カ所のカジノでマネーロンダリングされた後、再び闇為替ブローカーを通してドルに変換、香港を含む複数の外国銀行口座に送金された。フィリピンのカジノ監督当局の調査でフィリピン・ルートが発覚した。

 

 もう一つのルートはドイツ銀行を通じて、2千万ドルをスリランカにあるNGOへの送金であった。送金先のShalika FoundationShalika Fandationと英語名の綴りを間違えた事で、送金を依頼したバングラデシュ中央銀行に確認が求められたことから、ハッキング事件が発覚したのである。

 

 判明された2つの資金流出を含んで、パキスタン口座から総額10億ドルの複数の送金依頼、個人や団体名義への振り込み依頼を受けていたニューヨーク連銀も、疑いを抱きバングラデシュ中央銀行に確認を求めたことから、不正送金が発覚、流出被害の拡大を食い止めたのである。

 

バングラデシュ中央銀行は一部流出した資金を回収することはできたが、ニューヨーク連銀の監督責任を追求している。ニューヨーク連銀は、連銀システムがハッキングされた形跡はなく、口座からの送金指示は規定のプロトコールに準じて行われ、SWIFT(銀行間で使用される国際銀行間通信協会)のシステムが本物と認識したため、資金が送金されたと主張している。

 

 

 

 世界で最もサイバー攻撃を受ける国の順位では、バングラデシュは20位である。ハッカー集団はバングラデシュ中央銀行のシステムにハッキングし、SWIFTシステムで資金を引き出し、その資金を送金するために必要な情報を盗んだと思われる。ハッカー集団はニューヨーク連銀に36件、総額10億ドルの資金送金を依頼していたのである。