Source: formiche
2015年はEUが加盟国に、金融機関の再生・破綻処理の際の「ベイルイン」制度の導入を訴えてきた年であった。12月末には、全加盟国で導入が終了、2016年1月1日をもって、全てのヨーロッパの銀行で「ベイルイン」制度が発動される。次の金融危機の際に、金融機関の破綻処理にヨーロッパでは、公的資金ではなく「ベイルイン」制度が活用され、世界中の銀行で活用されるためのテストランとなる。
「ベイルイン」制度の発動
イタリアの4つの地方銀行、Banca delle Marche, Banca Popolare dell’Etruria e del Lazio, Cassa di Risparmio di Ferrara, とCassa di Risparmio della Provinincia di Chietiは2年前から破綻危機を解決するために行政指導を受けていた。新しく設立された銀行処理基金により、36億ユーロの救済資金を受けることになっているが、その前に「ベイルイン」制度で株主や劣後債の保有者が損失を被ることになった。
約130,000人の株主と劣後債の保有者が破綻銀行の救済資金の対象となったが、イタリアでは、劣後債を購入する年金生活者が多いため、今回多くの年金生活者が犠牲となった。11月末には、預金の全て(10万ユーロ)を失った年金生活者の首吊り自殺が報道され、イタリアで問題となった。自殺した年金生活者は、50年間顧客であった銀行の債権を保有していたため、全てを失い、銀行により自殺に追い込まれた手紙を残していったのである。
英 BBCは、「イタリアの4つの地方銀行の救済は「ベイルイン」であった。2008年の金融危機の際に一般の納税資金を使い、批判が高かった公的資金とは違い、今回は銀行の債権保有者が救済資金を負担した。」と報道している。
イタリアのマッテオ・レンツィ首相は2016年1月の前に急いで破綻処理を実施したのは、EUが導入を進めてきた「ベイルイン」制度にあると説明した。2016年からは、株主や劣後債の保有者に限らず、10万ユーロ以上の預金を持つ一般の預金者も対象となる。したがって、救済資金は、約100万人の預金が対象となり、6,000人の銀行員の失業者を出す事になると予想したからであると指摘した。
米国のドッド・フランク法下の「ベイルイン」
2010年のドッド・フランク法が成立してから、「大き過ぎてつぶせない」銀行の救済は「ベイル・アウト」で行う事が出来なくなった。11月末に連邦準備銀行は「大き過ぎてつぶせない」破綻銀行に対して、緊急の救済資金を提供しないとする規定を導入した。
ヨーロッパに続いて、米国も「ベイルイン」制度を活用することになる。次の金融危機で銀行の破綻処理の際、預金者の預金が押収され、預金が銀行の株券や劣後債に交換される可能性が高い。現金化が可能かも未定な銀行株券や債権回収が可能であるかが未定な証書にと引き換えられることになる。
投資家のジョージ・ソロスはリーマンショック後の2009年に、世界の金融システムの崩壊が始まったと指摘した。銀行の一時的な救命維持が行われ、今でも続いているが、世界の金融システムは完全な崩壊に向かっていると述べた。ソロスは2014年には保有していた米国の「大き過ぎてつぶせない」銀行、Citigroup, J.P. Morgan, Bank of Americaの株も全て売却した。