原油を巡る新たな中東紛争の火種

23.01.2016

Photo: cut.jib.newsletter

 

 シリアのゴラン高原で、イスラエルが一方的に併合した地域に原油埋蔵が発見されてから3ヶ月。ジェイコブ・ロスチャイルド、ルパート・マードックなどの株主やディック・チェイニーを顧問とする米ジニー・エナジー社が1月から発掘を始めた。

 

 

イスラエルに併合されたゴラン高原

  シリアの南西に位置するゴラン高原は、地政学的に重要な地域である。以前はシリア高原とも呼ばれていたが、1967年の第3時中東戦争によって、イスラエルはゴラン高原の一部を占領し、イスラエル軍の管理下で定住が始まり、現在約2万人のイスラエル人が住んでいる。今日でもシリア領土として国際的に認められ、国際連合安全保障理事会決議242号においても、ゴラン高原からのイスラエ軍撤退が要求されている。それにも関わらず、1981年にはゴラン高原はイスラエルに併合された。

 

 

原油埋蔵の発見

 そのゴラン高原で原油発掘調査を始めたのが2014年。201510月には、通常の油層20~30メートルと比較して10倍位以上の350メートルと、大量の原油が埋蔵されていることが発見された。

 

 イスラエルの原油消費量は1日当たり27万バレルで、3/4は輸入に頼っている。ゴラン高原からの原油は1日当たり数十億バレルとも言われているため、原油に関しては自給自足できる国となる。

 

 問題はシリア紛争が続いている中、国際的に認められているシリア領土で原油の発掘が進められていることである。イスラエルが併合したゴラン高原の領地に面しているシリア側は、反シリア勢力が支配している地域でもある。アサド政権の転覆を求めるアルカイダやアル・ヌスラ戦線への支援と引き換えに、シリア軍からの地域の安全保障に合意したことをイスラエル防衛大臣Moshe Ya’aloは認めている。つまり、シリアの原油を取り出すために、テロ組織に警備を頼むようなとこである。

 

 

ネオコンで運営されているジニー・エナジー

 原油の発掘権利を持っているのが米ジニー・エナジー社である。ニュージャージーに本社を置き、非規制電力・ガス会社である。注目すべきことは、元ハリバートンCEOで、ブッシュ大統領政権で副大統領を務め、アルカーイダとイラクのフセイン大統領との関係性や大量破壊兵器を所有していたことを発言し、イラク戦争の引き金となった、ネオコンのディック・チェイニーが顧問の会社である。

 

 ジニー・エナジーの大株主には、世界最大の金持ちで銀行家のジェイコブ・ロスチャイルド、メディア王のルパート・マードックがいる。その他にもネオコンで元CIA長官のジェームズ・ウールジー、ネオコンで元財務長官のローレンス・サマーズ、ネオコンでヘッジファンドの帝王とも呼ばれるマイケル・スタインハルトが経営顧問である。

 

 

ISIS経由のシリアとイラク原油

 ISISが密売していたシリアとイラクの原油は、クルドやトルコの密輸入業者ネットワークに転売され、そこから クルディスタンス地方政府の原油としてトルコ経由でイスラエルが買っていた。イスラエルの消費原油の75%強はシリアやイラクから密売された原油とされている。

 

 ロシアの空爆で壊滅状態となった、ISISの原油密売ルート。イスラエルは今後、シリア領地で直接原油発掘を管理下に置く事になる。シリア紛争が解決に向かうどころか、ゴラン高原を巡り、イスラエルとの紛争が起きる可能性を招くこととなった。